めだか屋で奮闘しまっせ (フィクションです)
第十七話 自分の殻の巻(1) <=前編はこちら
第十七話 自分の殻の巻(2)
帰りの列車の中で、召田輔(めだすけ)は考えていた。
「ええ結婚式やったなあ。けど、わいにあんな結婚式出来るんやろか。」自分の身の上や仕事の事、家の事、歳の事、何一つとっても新郎の青年に勝るものが無い。一人で生きて行くのさえやっとである。新婚旅行に連れて行ける余裕も無いし、家庭を支えて今後やって行ける自信も無い。
何とかなるだろうと置き去りにしてしまった不安が、暗い列車の窓を通して鮮明に湧いてきて今にも泣き出しそうな自分が映って見えた。
次の日、召田輔は、東京土産を隣の爺さん婆さんや角の養魚場のメンバー、園芸資材店の店主にまで配って歩いていた。「東京はどないでした。」「わいの性には合いまへんけど、賑やかで元気なとこでしたで。」「そんなこと分かってまんがな。結婚式はどうでしたんかいな。」「盛大でええ式でしたで。」「せやろなあ、次は召田輔はんの番でっしゃろ。聞いてまんで。」「ハハハ、照れまんがな。」召田輔は努めて明るく振舞っていた。
そして、爺さんの店の前で、あかねにも特別な土産を渡して「幸せそうで良かったでっせ。」と話していた。あかねは「あたいも行きたかったわ。」と言いながら、飛び跳ねるように店へ戻っていった。召田輔は、あかねの後ろ姿を暫く見ていたが、店へ入った所で振り返って手を振ったので、慌てて軽トラに乗り込んだのだった。
それからと言うもの、めだかの家では普通に接していても、客が帰ってあかねと二人きりになると「ああ、餌やりしやんとあかんがな。」「奥のめだか、まだ卵産んどるやろか。」などと、何かの理由を付けてあかねと接するのを避けてしまう召田輔だった。
そんな折、オーナーから電話が入った。
「もしもし、召田輔でおます。」「召田輔さん、明日の夕方、角の養魚場へ来て貰えます。」「オーナー直々に、何か用事でんのか。」「ええ、ちょっと打ち合わせをしようと思いまして。」「打ち合わせでっか。店の方も落ち着いて来たし、宜しおま。」との事で、次の日の夕方、養魚場へ行っていた。
養魚場の片隅にあるテーブルにはオーナーと秘書の男性の他、養魚場で働いているメンバーが集まっていた。
早速、オーナーが話を始めた。
「皆さん、お忙しい所、集まっていただきありがとうございます。手短に終わりたいですので、率直にお話します。皆さんは今の養魚場の課題は何だと思いますか。」との問いかけに、一時、シーンとした時間が流れた。
召田輔が「それ、わいに関係ありまんのかいな。」と切り出したので、オーナーは「大いに関係ありますよ。」と答えて話を続けた。「それは、冬場にほとんど需要が無い事です。本来であれば、春から秋までに冬の期間用に資金を残さなければなりませんが、今年の経営状況では来年の春まで皆さんのお給料が払えないことになります。今年は、他のペットショップの収入から穴埋めしますけれど、来年からは独立採算にしないとやっていけませんので、どうすれば売り上げを伸ばせるかを皆さんも考えてください。これは、召田輔さんにとっても同様ではありませんか。めだかで生計を立てて行くつもりでしたら一緒に考えて欲しいと思い、お呼びしたのですよ。」
オーナーの話に一瞬ザワザワとなったが、それを抑える様にオーナーが続けた。
「それでは、一週間、対策を考えてください。来週の同じ時間に持ち寄り検討しましょう。」と、ほぼオーナーが話を進めて、その日の打ち合わせは終わった。
「そんなこと分かっとるけど、ああやって言われるとショックやなあ。」と思いながら、めだかの家へ戻る召田輔だった。
(つづく)
*---------------------------*
▼メダカブログランキングに参加しています
*---------------------------*
お知らせ
◆趣味のめだか おおさと ショップの営業について。
◆営業時間のご案内。
通常営業しています。
平日:13時~17時 土曜・日祝日:10時~17時 営業。
火曜・水曜 定休。(祝日の場合は営業。)
尚、営業時間外にご来店の方は電話にてご確認ください。
◆めだか通販は常時受付。
趣味のめだか おおさと めだか通販は常時受付しています。
通販サイトかメールでご注文ください。
◆めだか通販でクレジットカードが使えます。
PayPal決済を、めだか通販でご利用いただけます。
*---------------------------*
趣味のめだか おおさと ホームページは、
観賞メダカとデザランのお求めは、
*---------------------------*