めだか屋で奮闘しまっせ (フィクションです)

 

 

第十四話 召田輔、走り回るの巻(1) <=以前はこちら

 

第十四話 召田輔、走り回るの巻(2) <=前編はこちら

 

第十四話 召田輔、走り回るの巻(3)

 

 その後も客は途切れる事は無く、夕方五時を迎えていた。

ホッと一息ついた時、電話が鳴った。「ハッ、忘れとったや無いか。」と気付いた時には時遅しである。「あかねちゃん怒ってるやろなあ。」と思った召田輔(めだすけ)は、受話器を取らずに軽トラに飛び乗って店へ向かった。

店の手前で停めて、そろりそろりと店の入り口を覗き込んだ時、後ろから肩を叩かれた。「ワァー。」と叫んで振り返ると、ほっぺたをプクーとさせたあかねが立っていた。

その日は、「どんだけ待ったと思てんの。」「へぇー、あたいよりめだかの方が大事なんや。」と言われ放題で、「御免やで。」と、ただただ謝るだけの召田輔だった。

めだかの家、新装開店2日目の朝も、婆さんから爺さんが休むと連絡が入った。

「しゃーないなあ。今日は店を休みにするか、それとも、昨日みたいに店をあかねちゃんに頼んで、温室は締め切りにしてしもて、めだかの家だけで開けるしか無いなあ。その前に、あかねちゃんと約束したよって、梅の壺を探さんならんがな。」と、早くから店の中を探していた。

「此処にも無いし、此処にも無いか。そろそろ迎えに行かなあかんし。」召田輔は諦めてあかねを迎えに行き、今日も爺さんが休みであることを伝えた。

「あかねちゃん、どないする。」と召田輔が聞くと、「どないするって。」と聞き返して来たので、「店を休みにするかどうかやがな。」と聞くと、「何で、今日もあたいが店やるよって。」「そうか、せやろな。」「それで、梅の壺は。」と聞かれてギクッとなった。「ハハハハ、まだ見つかれへんねん。ハハハハ。」「絶対、探してね。」「そう言うたって、あんな大きいもん残っとったら見つかれへんっちゅうこと無いやろ。」「そんな大きいの。」「1メートル程あるやつやで。」「エーッ、そんな大きいの、知らんかったわ。梅漬ける言うから小さいのやと思てたわ。早よ言うてえや、そんなん棚とか探したって見つかるわけ無いやん。」「御免やで、棚に入るわけ無いなあ。もしかしたら爺はんが処分してしもたんかも知れへんなあ。」と、二人で話しながら店へ着いた時、あかねが「そんなに大きいんやったら、めだかを飼うのにええかもねェ。」と言われて、又、ギクッとなった。

「もしかして。」と冷や汗を流しながら、めだかの家へ戻った召田輔は、一目散にめだかの家の奥を探していた。

「やっぱし。」そこには大きな壺があり、めだかが元気に泳いでいた。

(つづく)

 

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