「いつか捕まると思ってたけれど……」
宮中の屋敷牢に閉じ込められるなんて、不名誉だけれどもなかなかない体験だな……と思い、複雑な気分だ。
それにしても一番の不安ごとはペンダントを無くしてしまったことだ。
胸に下げていたペンダントの感覚が無いことに気がついて、胸やポケットをまさぐっても無くて、血が引くように青ざめて、何度もあの時のことを思い出す。
もみくちゃに取り押さえられた時の事を思い出す。
「李流は何も悪くない!私が皇女と知らずに仲良くしてくれただけだから!捕まえるでない!私の大切な人じゃ!」
法子は女官たちに引っ張られるのを必死になって振りほどいて、警護に囚われ、あきらめていた自分とは違い、必死だった。
「ではこのものの素生は知っているのですか?衛士少年と言えど、この時間の見回りはおかしいし、こんな路地にまで宮様を連れ出して!きっと宮様を攫おうとしていたのです!」
十五歳の自分に法子様を攫って得することなんて、何もないのだけど、この場所に自ら来たのは確かだった。
迷ったのではなく導かれてきた……
「女官と偽って李流と逢引していたのは私の方じゃ!捕まえるなら私を捕まえるが良い!」
「逢引って……」
十歳の皇女様がいうにまったく相応しくない言葉にその場にいるもの達は、ぽかんと口をあけた。
「ほ、法子様っ……」
なぜか李流の顔が赤くなってしまった。
逢引だと思っていてくれたのか。
多分深くはわかってないと思うけれど、大切な人と言われた言葉だけでも感無量なのに……
「と、とりあえずこのモノの取り調べの方が先です、法子殿下の名前も存じていたようだからな……」
ジロっと宮中警察に睨まれる。
知らない分けないじゃないか……
この国の唯一の宮姫様なんだから……
「知っていましたよ……
法子様が宮姫さまと、だからこそ、いろいろと真実を知って欲しかった。
それだけです。ただ、それだけです。」
李流は知らずに満足な笑顔を法子に向ける。
「李流……」
寂しそうな申し訳なさそうな顔を法子はする。
「私は李流のこと何も知らないのに……今度は李流のこと教えて欲しかったのに……」
「また巡り会えたら全てお話致します」
そういい終わると李流は警備隊に連れ去られた。
「さ、法子さまも帰っても事情を詳しく話してもらいますよ」
女官長の引きった笑顔が怖くてそっぽを見いた時、地面に光るものを見つけて女官長を無視してそれを拾った。
「法子様が落としたものですか?」
女官長が上からのぞき込んできて、ペンタントを見てそう問うた。
法子のものではないのはペンダントの古さを見れば一目瞭然だった。
このペンタントは代々宮姫のお守りとして作られるもの。
今や宮姫は私だけで二つと無いもののはずなのに、そして外に出る地図がほってある。
持っていたとしても近代になった時代に姫宮として産まれたものの子孫なら持っているのは可能性はある。
持ち歩くようなものではない家宝といえるもののはずだ。
この場所を知っていたのは李流のみ。
ではこれは李流のペンダント?
李流とこの場所で会えた謎の符号は一致したけれど、どうして李流が持っているのだろうという新たな疑問が湧いた。