10☆最後の逢引
 祈りの宮の塀の裏にいつものように法子は李流と逢い引き(深い意味ではない)している。

 今日は懐中電灯が必要ないほどに輝いた月が二人を照らす。

「発表会はうまく行ったぞ!李流のおかげじゃ!」

 月光に反射して目が輝いている訳ではない。
 発表会で自分の言いたいことをみんなに伝えたこと

 そのことに関して木金さんに詰め寄られたけれど、きちんと伝えられたことにも満足で李流に詰め寄るように武勇伝のように報告する。

「そういえば私だけじゃなくて、クラス委員が私のことフォローしてくれたぞ。
 私一人だけじゃ、木金さんに言い負けていたかもしれない。クラスのみんな洗脳されてると思ったけれどきちんと分かってる者がいるのも嬉しかったぞ!」

 それは自分の従兄弟だとは言わず

「まだ公に言えるような時代じゃないんですよ。みんな知らないことが多いですから」


「真実も言えないのは辛いな。」
 
 神妙に法子は考えつぶやいた。
 
「そうですね…」

 その言葉が不意に李流の胸にとげを刺す。

 李流も真実をすべてさらしていないからだ。

 法子は思いを言霊を口にする。

「いつかきっと真実を国民みんなが知る時代がくればいい……いいや、そういう時代がきっとくると思う。
近いうちにきっと……早くそういう時代がくるように私は祈り姫にならねば!」


 輝く満月に拳を突き上げ誓う。

 法子の誓いのポーズをみて李流は一瞬ぽかんとしてしまったけれど、

 姫宮さまはとても力強い決意を持っていらっしゃると思うと笑いがこみ上げて声を上げて笑ってしまった。

「あはは!法子様サイコー!」

 お腹を抱えて李流に笑われて顔が真っ赤になる。

「私はおかしいことを言ったのか?本気で言ったのだが……」

「いえいえ、とても可愛らしいし、アニメにでてくる正義のヒーロー…ヒロインのようですね」

「そ。そうか。」

 法子は照れる。

 照れる法子がかわいくて頭をついつい、なでなでしてしまう。
 とても、とてもおそれ多いことなのに……
 そうすると法子は照れながらもとても嬉しい表情をするのだ。

  法子は顔を引き締めると頭をなでてくれている李流の手を両手で包み込む。

 それは木金さんの手を包み込んだように。
  法子の暖かさが伝わってきて胸が熱くなってなぜだか感激で瞳が潤む。

「すべて李流のおかげじゃ。ありがとう。」

 今までにない最高の笑顔だと思い李流の息が詰まる。

「私に自信を持てたこと、日和を愛する心を与えてくれたこととても感謝している。」

「そんな……私はなにもしてません……私も法子様に会えただけで…」

 人生最大の喜び……

 と言おうとしたところで
  突然あたりを真っ白に照らすほどの光に包まれた。

「こんなところで宮様となにをしている!」

 宮廷警備員十人ほどが李流と法子を包囲した。