1つ前のお話はこちらです😊


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妄想、BL(O×N)のお話です。BLの意味が分かる方、妄想とご理解いただける方のみお進みください。









智10

ついに二宮さんが家に来る。
いや、レッスンの度に来てはいるけど。

レッスンに使っているリビングダイニング以外の場所で誰かと2人きりになるのは初めてで朝からそわそわ落ち着かない。

念入りに掃除をして、飲み物も準備して、プロジェクターの調子もチェックして、それでも何か足りない気がする。
もう一回家中を回って最終チェックをしてこようとしたところでインターホンが鳴った。

映画を見る前にまずはレッスンなのに、レッスン中も気がそぞろで音を外しまくり、二宮さんに心配されてしまった。

ダメだ、落ち着け、俺。

結局少し早めにレッスンを切り上げてシアタールームに案内したけれど、シアタールームのソファーは「誰か家に来ることなんてないだろ」って1人でゆったり座れるように小さめの2人がけソファー。
2人がけとはいえ2人で座ると二の腕がくっついてしまう。

「狭くてごめんね?」

こんなことなら普通サイズの2人がけソファーを買っとけば良かった。
でも腕から伝わる二宮さんの体温が心地良くて、むしろこれで良かったのかも。

でもこれ、手はどこに置こう?
太ももの横だと二宮さんの手に重なってしまう。
さすがにそれは嫌がられるよな。

とかいろんなことを考えた結果、きちんと膝の上に両手を置いて映画を見ることになったんだけど、いざ映画を流し始めると「そうだ、こんな風にチェロで聴く人に影響を与えたいと思ったんだ」と当時のことが懐かしく蘇り、それまでうだうだ考えてたことがどっかに行っていつの間にか映画に没頭していた。

「はー、楽しかった!
インドの虎狩りってすごい激しい曲なんですね!」

「うん。昔これを絵本で読んで、あんな風にチェロで猫から火花を出せたらすごいと思ってチェロを始めたんです」

きっかけなんかを話しながらリビングに戻る。

「バックで流れていたのがゴーシュ達の楽団が練習していた交響曲6番て曲ですか?」

「そう。原作には誰の6番か、っていうのは書かれていないんですが、賢治のレコードとかから推測してベートーヴェンの交響曲6番だろう、ってことになったらしいです。
ベートーヴェンはこれに田園という標題をつけていて、その名の通り自然の優しさや厳しさを感じられる楽曲です」

俺は5楽章のチェロのメロディが好きなんですよね、とその箇所を弾いてみる。
ベートーヴェンの曲は総じてチェロが難しいけれど、こんな綺麗なメロディを弾けるなら頑張ろうと思える。

弾き終わって「どうでしたか?」と二宮さんを見て驚いた。
二宮さんの目から涙が溢れてたんだ。


次はあややん💛