1つ前のお話はこちらです😊

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妄想、BL(O×N)のお話です。BLの意味が分かる方、妄想とご理解いただける方のみお進みください。








智2

はじめは順調に進んでいた音楽人生に暗雲が漂ったのはオーケストラに入って5年くらい経った頃。

社長が自分の孫娘との縁談を持ちかけてきた。

「君も適齢期だし、所帯を持って守るものが出来たら音の幅も広がると思う。
どうだい、身内の贔屓目を除いてもうちの孫娘は美人だし気立てもいいよ」

そう言うけれど、見せてもらった写真では可もなく不可もなく。

いや、もしかしたら美人なのかもしれないけど、昔から俺は女性に興味を持てたことがなく、人の顔の造作がどうこう思ったこともないし、好きな人が出来たこともないから美人と言われてもピンとこない。
チェロがあれば1人でも別段寂しくもなかったから友人達の色恋の話を聞いても羨ましいとも思わなかった。

それでもずっと支援してもらってオーケストラに入れてもらった恩もあるし、音楽の幅が広がると言われたこともあって一度会ってみることにした。

高級懐石料理店でセッティングされたお見合い。
「初めまして」というその一言でダメだった。

俺は音、というか人の声にもすごく敏感で、好きじゃない声というのが存在する。
彼女の声はその中でも群を抜いていて、何が嫌って言葉では説明出来ないんだけどとにかく生理的に受け付けない。

社長の手前、しばらくは我慢していたけどだんだん頭も痛いし気分も悪くなってきて「ちょっと、体調が・・・」と途中で抜けてきてしまった。

翌日、「大丈夫かい?」と連絡をくれた社長に「申し訳ないけれどどうしても声が無理で・・・結婚は出来ません」と言うと、揶揄われていると思ったのか激怒、支援は打ち切られオーケストラも辞めさせられることになってしまった。
残念だけど我慢出来ないことというのはあるもんだ。

ゲーム音楽とアンサンブルの舞台を最後に俺はオーケストラを退団し、自宅でチェロ教室を開くことにした。
もう人との付き合いはあまりしたくないけれどチェロで食べていくためには仕方ない。


人は好きじゃないけれど、音楽は良い。
悲しい気持ちで弾くと悲しげな音色になるし、明るい曲調の曲を弾いていると気持ちも音色も明るくなる。
ただ空気が振動しているだけなのになぜこんなにも寄り添ってくれて、心に沁み渡るんだろう。

チェロを弾きながらいつも思う。
でもこの謎はずっと解けなくても良いのかもしれない。

音の波にゆらゆらと漂いながらチェロと自分しかいない世界に没頭していると、

ピンポーン

と無粋なチャイムの音に邪魔をされた。
同じ“音”なのにいつまで経っても心地良いと感じられない音もある。
不思議だ。

「はい」

モニターを見ると可愛らしい顔立ちの男性。

「あ、こんにちは。体験レッスンを申し込んだ二宮です」

そうだ。
今日から体験の生徒さんが来るんだった。
それにしても今の声の波長はなんだかしっくりくる波長だった気がするな。

ほんの少しだけ、直接声を聞くのを楽しみに思いながら「どうぞ」と門扉のオートロックを外した。



次はあややん💛

チェロの音域って聴いててなんとなくリラックスしますよね☺️
低いからイケボの男性が歌ってるみたいな感じで✨