妄想、BL(O×N)のお話です。BLの意味が分かる方、妄想とご理解いただける方のみお進みください。








《side  O》

階段を降りてくと、壁際に蹲る影。
何かの時のため持たされているポケットサイズの小さな懐中電灯で照らして声をかけると、顔を上げてうるうるの目がこっちを見た。

え、めちゃ可愛くね?
薄暗がりでも分かるくらい肌はきめ細かくて白い。
髪の毛はふわふわで上目遣いがなんだか柴犬みたい。

「置いて行かれて」って言う彼に、脅かした手前謝ると、どうやら俺のことをお客さんだと思っていたようでライトを取られ照らされた。

今の俺は血みどろで頭の皮を削ぎ落とされた幽霊で。
そんな俺に悲鳴をあげてライトを落とし、泣き声で「来ないで」と言う彼をどうにも守ってやりたくなる。

こんな怖がりなのに置いていかれて。
俺だったら絶対置いてかないのに。てか、相手が怖がるようなとこわざわざ入らないのに。

顔の片側は髪の毛で隠れるからメイクはしてない。
髪をかき上げて半分だけど素顔が見えるようにし、「非常口まで案内するよ」となるべく優しく声をかけると、ようやく少し落ち着いたようだ。

でも腰が抜けてしまって立てないみたいだから、「ちょっとごめん」ってお姫様抱っこして非常口へ向かった。
首にしがみつかれ、可愛い彼の顔がすぐそこにあってドキドキしてしまう。

神さま、ありがとう。
今日は今までで1番の誕生日だわ。

「出口はあっちね。あそこらへんで待ってたら彼出てくると思うよ」

ずっと抱っこしていたかったけどあっという間に非常口に着いてしまい、もう大丈夫という彼を降ろして出口を案内する。

このお化け屋敷はかなり広いし、出るための玉を集めるのだって結構大変だからさすがに連れの人はまだ出てきてないだろう。

「いえ・・・彼とはもう別れます」

もう話すこともないんだろうな、と残念に思ってたら、彼が寂しそうに呟いた。

「そっ・・・か・・・。
恋人置いていくような奴だもんなぁ」

「せっかく遊園地楽しみにしてたのに。最悪の思い出になっちゃった」

「あ・・・あの!あと1時間くらい時間潰せる?
そしたら俺、仕事終わるから・・・良かったら一緒に遊ばない?」

あんまりにも悲しそうで、なんとか笑顔で帰ってほしくて、思わず誘っていた。