障害者基本法において、障害者とは「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期に渡り日常生活又は社会生活に相当な制限を受けるものをいう」と規定されている。法律名からして「障害」という表記になっている。

 

 「障害」の表記は、もともと「障碍」という表記だったのが、簡略字体を用いる流れの中で「障害」という表記になったそうだ。「害」の意味は「傷つける、悪い影響をおよぼす」であるのに対し、「碍」の意味は「さまたげ」である。障害者は、悪い影響を及ぼす者という観念を想起させる。そのため、本来の意味を表す「障碍」や「障がい」を使用する団体も多くなっている。障がい者団体も、「障碍」の表記にするように求めているという。

 

 そのような中、26日、文化審議会国語分科会の小委員会は、「碍」の字の常用漢字への追加を見送った。小委員会は、常用漢字は公文書やメディアなどで使う際の目安であり、社会での使用実態に基づき採用されてきたとして、「追加を要するような使用頻度の高まりや使用状況の広がりは生じていない」ことを理由に追加を見送ったようだ。

 

 つまり、常用漢字表には、社会問題の提起などのために、漢字を選ぶ役割はないとの考えだ。また、「障碍」も、辞書上、必ずしも良い意味ではないとも指摘したとのこと。しかし、「障害」という表記よりは、悪い観念を持つ方は少ないのではないか?確かに、審議会が社会問際の問題提起をする役割がないことも分からないではないが、「障害者」という表記はベターではないことは理解できる。

 

 「碍」は、2010年の常用漢字表記改定でも、候補になっていたが、使われる頻度や熟語が少ないなどとして追加を見送ったという。しかし、常用漢字に追加されていないから、公文書には表記をしないのである。地方自治体などでは、やむなく「障がい者」という表記をすることとしているわけだ。これでは、いつまでたっても、「障碍者」という表記にはならないし、「障害者」という法律上の表記が定着していくだけである。

 

 審議会はかつて政府の障がい者政策に関する会議の方針次第で再検討するとしていたが、政府の同会議は結論を出していないという。そもそも、政府は「障害者」で良いと考えているのであろうか?難しい問題だから議論を避けているのだろうか?とりあえず、「障がい者」という表記に変えることも視野に入れて検討すべきではなかろうか?