春のまだ枯れ木の残る山、朝日が輝く山、愛宕山を中学校最期の記念に友達数人と登山した。社会科の先生にお聞きしたら、愛宕さんは登った人を忘れない、同級生と登るといいよと言われ、大きなグループから男子から順に登り、記念撮影を撮ったとか山の中腹で、弁当食べたとか卒業前の話題でもちきりだった。やっと私達女子も順番が、来て登った。大きく歪む朝日を右手に愛宕山に入る。登りながら、友達と白い溜め息をつく。春なのに朝はまだ寒い。一歩一歩早春の浅き白き朝日に晒された山の枯れ木を踏み締め、愛宕山に登った。中学卒業式前に、水戸線に揺られ、愛宕さんを目指す。思い思いのリュックサックを背負いリュックサックの隣には小さなキーホルダーのキティちゃんやスヌーピーが揺れている。スヌーピーはその頃流行り始めたちょっと高価なキーホルダー。リュックサックにかけてあるキーホルダーは歩く度にメトロノームのようにカチカチと揺れ鳴る。歩調を合わせてるようだ。何となく思う。白い砂利道を登山道を歩きながら、冷たい春風に頬を晒し、朝日に赤く染まる友達の口唇をみて綺麗だと思う。高校は別々の進路だけれど、もうこういう道は辿れないのだなあと思う。皆、別々の道。愛宕山の道は白く遠く山頂まで続いているのだろう。梅の朝日色に輝く枝に隠れ先が見えない。ちょっと寒いからと唇にニベアのリップクリーム、友達は軽く塗る。スヌーピーの帽子を受けとる。先程飲んだコーラの香りが軽くする。茂みがあり、私達は各自屈み込みながら思い思いの白いスニーカーの紐を縛り直す。梅がピンク色桃色に香る愛宕山系は蒼く早春の香りがした。早春の愛宕さんを登山した。友達と。ある友達はリュックサックのお守りは母親の手作りで愛宕山で新調するかなあと話し、愛宕山はそういう神社はないよ、と別の友達が軽くいなした。近くの紅梅の枝を一枝折った。それを指揮棒にして、皆で学校で習った北原白秋の椰子の実を歌った。歌いながら涙が零れてきた。県立の高校に合格した友達だけで来ている。不合格の友達は泣きながら八溝山へ行ったという。後から八溝山へ行った友達から、いつまでも友達よ、forever you と白く小さく描かれた七宝焼きを貰った。友達は涙目で負けないよ、と囁いた。私と友達はきつく七宝焼きを握りしめ、お互いずっと語らず泣いていたので、男子が、レズとからかった。愛宕山の春風は冷たいね、県立高校へ合格した別の友達が、笑いながら声を弾ませた。私達は名々ハイキンを楽しんだ。


「明日から別々の高校だけど、高校生活は楽しみたいね」、「私はバレー部に入ろうかな」、「私は編み物部。」「お姉ちゃんに聞いたけれど高校は編み物部はないって。」「じゃ、料理部。」「お父さんのケーキ美味しいしね。」「うん、またクリスマスのケーキ作りお願いね、」「うん、いいよ、」




私にはお呼びが、かからない、当然だ。去年友達のケーキ作りに初めて参加して、失敗し当時高価な大粒の苺を一つ床に落としてしまった。友達の家はケーキ屋さん。しまったあ、落ち込んで家に帰ってしまった私に後から友達が、クリスマスケーキを一つ大きく持ってきてくれた。ケーキは悲しく涙が出そうに美味しかった。




気まずく思いながら愛宕山の登山道を歩く。紅梅が青白く天を翳し、眼下に、白く光る町並みが朝靄に綺麗だ。気にしない、ドンマイドンマイ。友達は私の心を察してか、軽くいなしてくれる。眼下の町が、高度を上げるたびに白く遠く。あれが、先程登る前にコーラを買った自動販売機。友達が、指差す。真っ白くそれはあり、駅は小さく無人だ




紅梅が綺麗だ。友達の顔の汗も綺麗だ。明日から高校生活、頑張ろう。朝日が、愛宕さんと紅梅と友達の白い汗を照らしている。高校生活は楽しみだ。