持国天はインドラに仕える四天王で、治国天、東方天とも言われる。左手に刀、右手に宝珠を持ち、唐代の将軍の格好をしている。眷属にガンダルヴァ半神半獣の奏楽神団、食香香りを食べる、魔術師、蜃気楼、ケンタウロス、パーン。ピシャーチャ食人鬼邪鬼がいる。



持国天を祀る寺があり、八宗の祖と言われかなり賑わっていた。寺の和尚さんも、檀家さんが増える毎に金銀財宝を身に付けシャネル、ジッポー、ローレックスと時計や、またフェンシングの達人で剣の鞘も宝飾で飾られ、日々愛妾さんも変わっていた。

そのうちの一人が、何を思ったか、フェンシングの宝飾の綺羅びやかな剣を売ってしまい、ピカソやゴッホの絵に変えてしまった。和尚さんは気づかない。

今度は絵の展覧会かと、毎日ピカソやゴッホの絵を一回10円、で天覧していた。付近の皇族方も一回10円ならと行列が出来た。そのうち、一番高いゴッホの絵が盗まれてしまい、今度は和尚さん慌てて、捜索願いを出し近くの田圃から発見された。だがよく見ると、ゴッホの絵はどこかキラキラしていて自分が所有していた時より見事だ。絵の鑑定士も現れ多少違いはあるものの本物です、と再度鑑定証を発行してくれた。鑑定証をよく見ると額の縁がちょっと違うと書いてあった。絵の左額面が、少し青銅色で青っぽく骨っぽくなっていた。


和尚さんは、田圃に落ちたので多少変色したのだろうとさして気にはしなかった。やれやれと絵捕物帖は終わったと、家に帰ると寺の門の前で、「置いてけ、置いてけ」と地中深くから、地響きを立てて声が聞こえる。和尚さんは、不思議に思い正面の持国天の立像を見上げる。すると左腕が半分、下が無い。和尚さんはびっくりして腰を抜かすと、立像の脇を一目散に駆け抜け、寺の厨房に走り込んでしまった。絵はスルッと和尚さんの脇から抜けて地面に落ちた。ドドーン、凄い地鳴りがして、絵は地面に落ちた。振り返ると絵の脇に大きな青銅色の腕が落ちてあり、立像の持国天の、半分下が無い腕と丁度合う。和尚さんは南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏と、一心に念じながらボンドで腕をくっつけたそうだ。その後、絵の半分が、無くなり持国天の立像に腕輪が新たに煌き出し、和尚さんが接着剤で繋いだ腕のあたり、に金銀財宝の腕輪が新しく輝いていた。