前に日本海側と太平洋側との気候の違いでスミレの分布が異なるという話をしました。
それは、スミレ以外の植物でも見られます。

今回は主に太平洋側に分布するツクバキンモンソウと主に日本海側に分布する
ニシキゴロモを比較してみたいと思います。変種関係にある植物です。






ニシキゴロモ(錦衣)
<学名:Ajuga yesoensis Maxim. ex Franch. et Sav.>
シソ科 キランソウ属 多年草

 

北海道、本州(主に日本海側)、四国の山地林縁や道端に分布。
茎は根元から1~数本、直立し、やや縮れた毛が散生する。

撮影日 2020.05.23: 群馬県(榛名山)

葉は対生、葉柄は長さ1~2㎝。葉身は長さ2~6㎝、
幅1~3㎝の倒卵形~長倒卵形、縁に浅い鋸歯があり、
鋸歯の先や葉先は鈍頭。葉表には光沢はなく、葉脈が
鮮やかに紫色になることが和名の由来である。
葉裏は紫色を帯びる。

花期 4~5月葉腋に花を2~6個ずつ付け、
茎が短く、花が固まってつく。花は淡紫色~淡紅紫色の唇形花。
筒部は長さ10~11㎜。上唇弁は長さ2~3㎜、2裂して直立する。
下唇弁は3裂して大きい。雄しべは4個。萼は長さ約6㎜、
先が5裂し、毛がある。

太平洋側にはツクバキンモンソウと呼ばれる変種が分布している。

 

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群馬県は関東北部内陸にあります。大体は太平洋側の内陸気候になり、
ツクバキンモウソウが分布しています。
県北部の新潟との県境は高い山々で、雪の多い日本海側の気候地帯となります。
そのあたりでは日本海側に分布するニシキゴロモが分布しています。
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ツクバキンモンソウ(筑波金紋草)
<学名:Ajuga yesoensis Maxim. ex Franch. et Sav. 

             var. tsukubana Nakai>
シソ科 キランソウ属 多年草
 

 

本州(主に太平洋側)、四国に分布するニシキゴロモの変種。
茎は紫色を帯びて立ち上がる。

撮影日 2020.05.17: 群馬県(野反湖)

葉は対生し、葉柄は長さ1~2㎝、紫色を帯びる。
葉身は長さ2~6㎝、幅1~3㎝の長楕円形~広卵形。
葉表は葉脈が濃紫色、毛が散生し、光沢はない。
葉裏は紫色を帯び、毛が散生する。

花期 4~5月花は葉腋に2~6個ずつつき、淡紅紫色~白色の唇形。
花冠の上唇がごく浅く、2裂し、普通、長さ約1㎜と短く、
雄しべが花冠の外に出ている。まれに上唇弁が約2㎜の
長いものも見られる。下唇は3裂して大きい。

母種のニシキゴロモは主に日本海側に分布する。


 

シソ科の植物の花はふつう左右相称の合弁で、花冠は唇形と呼ばれます。
上唇、下唇に分かれていてそれぞれ2裂、3列しています。
ツクバキンモンソウ / ニシキゴロモの見分け方として2裂している上唇の
長さが分かりやすいポイントです。
ニシキゴロモは上唇が長く目立ちます。蕊が隠れるくらいです。
対してツクバキンモンソウは上唇より蕊が出ています。