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船は順調に旅を続けた。
停泊する度にアルは下船し散歩をした。
ときには遠出をし、古い神殿跡地を見たりした。
ほとんどが砂に埋もれ、円柱や柱廊、大正門の上の部分しか見えない。
修復されぬまま見捨てられたように傾いている神殿もあった。
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それでも圧巻だ。写真やテレビで観るのとは圧力が違った。
それに色彩や完全な形も残され風化していない。
墓場のような石の塊ではない。
きちんと石に化粧が施されていて色彩が実に美しい。
現代のエジプト遺跡には見られない、まだ崩れていない状態で残されている。
これを観ただけでも、アルはこの地に来た甲斐があった。
いよいよ船はメンフィスまで来た。
この地はすでにエジプトファラオの支配する地だ。
即ちヨセフの目の届く安全地帯とも言える。
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上エジプトではそれぞれの州知事が治めている。
今の時点で、ヒクソスの王がエジプトを一応統一し、
平和を保っているように見えても、
いつ再び王朝がひっくり返されるかはわからない。
虎視眈々と王朝の権力の座を狙っている者たちはいた。
テーベはまさに目の離せない地なのだ。
だからこれだけの軍隊を引き連れての旅路となった。
しかしここまで来れば、ヨセフも肩の力を抜くことができる。
船は再び停泊した。
訪問者や廷臣たちとの接見もなく、儀式の挙行やしきたりもない。
ここでは仕事を離れることができるようだ。
ヨセフはアルを誘い、下船し、ここから馬車に乗り換えた。
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先頭には騎馬隊が先導し、次にヨセフの乗った馬車が進み、
後方にアルの乗った馬車が続くと、後ろから追随する供の者たちが列を連ねた。
アルの馬車には老執事が隣席した。
どうも落ち着かず恐縮している様子だ。
その理由をアルは尋ねた。
「私は以前から執事としてヨセフ様に仕えておりました。
この度アル様をお迎えに行くことでお供させていただき、
これからはアル様に仕えるよう命じられたのです。
その私でさえ、ファラオの太陽の船に乗るのは初めてな上に、
車まで乗せていただけるなど夢にも思っておりませんでした。
こんな栄光に与れたのも皆、アル様のお蔭でございます。
きっとアル様はヨセフ様にとっても大切なお客様なのでしょう。
それに、あんなに楽しそうになさっておられるヨセフ様を見るのも初めてでございます。
まるで本当の兄弟のようでございます。どちらもお美しくあられますし。
私めも、とても嬉しゅうございます」
この老執事は、アルを男として疑っていないようだ。
アルは内心でほくそんでいた。
「パピルスの詩」
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