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「笑わせるぜ。何の権利があってそんな真似をする?
ラーモセは自分の意思でやっている。ガキじゃないんだ。俺の前から失せろ」
「ラーモセのお母様はこんなこと望まなかったわ。他の生き方をさせたい。あなたにだって他の生き方があるはず、もうやめて」
サブの眼が鈍く光った。表情が完全に消えた。
エセが、もうやめてと耳元で囁く。
「帰らない。ラーモセを連れて帰るまでは」
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そのとき、暗がりから声が飛んだ。「帰れ。お前には関係ない」
それが誰の声だかすぐにわかったが、アルは微動だにせず、ただサブを真っすぐに捉えていた。
ラーモセがあ姿を現した。
「聞こえたか?お嬢ちゃん」サブは片方の眉を上げ、肩をすくめた。
アルは動かない。
狂気の沙汰としか思えないアルの無謀さに、ラーモセじゃ怒りを込めた。
「何しに来た?帰れと言ったのが聞こえないのか?お前の来るところではない。帰れ」
アルは笑顔でラーモセを振り返る。「一緒に帰ろう」
ラーモセは声も出ない。
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サブが眼で合図を送ると、男たちがラーモセの腕を掴んだ。
ラーモセは必死に抵抗したが、さすがに大男が四人ラーモセの両腕を捕らえていたので、身動きが取れない。
サブは残忍な笑みを浮かべた。
「そこまで言うには、相当な覚悟があると見た。それを称えて、一度だけ機会をやろう。
脱会させてやってもいいが、俺達には俺たちの掟がある。
それに従うというなら考えてもいい。どうだ?今なら逃げられるぜ」
ハブ、ケン、パネブ、サフは眉根を寄せ、アハとバ、ジャウは黙って成り行きを見守っていた。
その他の連中は揶揄し歓声を上げて楽しんでいた。
この連中はアケトの仲間ではなく、今度の仕事に人手が足りなく、急ぎで搔き集めたならず者の集団だった。
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「止めろアル、帰れ。サブ、止めてくれ。エセ、あいつを連れて帰れ。頼む」
ラーモセは叫んだ。必死の抵抗も空しく、身体は羽交い絞めにされ手出しができない。
「わかった。条件を言って」アルのこの答えにラーモセは顔から色を失った。
ラーモセはサブに言う。
「わかった。それなら俺を好きにしろ。殺すなり煮て焼くなり何でもやれ。
その代わりこいつには手を出すな。
もし手を出すなら、俺はお前を一生許さない。これは最後の警告だ」
サブの顔を歪み、ラーモセを睨んだ。エセは眼を伏せ何もできない。イウイアの眼に涙が滲んだ。
アルはラーモセに言った。「私は大丈夫。必ず一緒に帰ろう」
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「頼むアル、止めろ。本当に怒るぞ」
アルは視線をラーモセからサブに移す。すでに覚悟はあった。
サブは怒りで震えていた。「あいつを連れて来い」
何人かの男が紐で縛られた男を連れて来た。
その男は小柄だったが、その目は死人のように虚ろだった。
表情は全くないが、漂う空気は底知れぬ気味の悪さがあった。
さすがのアルも凍りついた。さらにラーモセの表情は怒りと恐怖で蒼白だ。
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サブは笑う。
「さっきの勢いはどうした?今ならまだ後戻りできる。
ただし、ラーモセや俺たちの前から消えろ。二度と俺たちの眼の前に現れるな」
アルの足は震えていた。でも逃げようとはしなかった。
サブは畳みかけるように言った。
「この顎髭の小男は、プント(東アフリカのスーダンあるいはエチオピア地域)出身で、俺たちの仲間ではないが同業者だ。
だが、ハイエナのように陰険でしつこいのさ。狙った獲物は必ず仕留める。
今回俺たちが苦労して手にした品を、横から盗もうとしたので捕らえた。その名はまさに砂漠のハイエナだ。
出身以外この男に関しては知る者は誰もいない。テーベではこいつの首に賞金がかけられている。
だから差し出して金を頂くつもりだったのに、気が変わった。こいつと勝負させてやる。
勝った方の望みを叶えてやる。ハイエナが勝てば逃がしてやる。お前が勝てば、ラーモセを自由にしてやる。
この男はやる気満々だ。さて、お前はどうする?
この男は今までも何人もの人間を殺している。お前を殺すのなんか何とも思わない。
表情一つ変えずに首を掻っ切るだろう。小柄だが腕も確かだ。どうする?」
アルは喉が渇いて声が出ない。緊張で身体も動かない。
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ラーモセが静かに言う。
「こんなことして俺が喜ぶとでも思ったのか?感激して礼を言うとでも?
ふざけるな、お前に何がわかる。もう俺の前から消えてくれ。
二度とこの地に来るな。これでお前と俺とは何の関係もない。
アル、お前を今初めて憎いと思った。
それでも死にたいと言うなら、勝手に死ね。もう俺には関係ない」
「ラーモセはああ言ってるいるぞ」サブは冷やかすようにアルを見た。
誰もがアルは諦めるて帰ると思った。
「ここへ来たのは自分のため。ラーモセのためだけではない。だからこの勝負やるわ」
これで死ねるのなら本望だった。
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「パピルスの詩」






