亡き妻も好きだった味

 

3年前、娘が大学1年生の頃だった。

「うどん屋さんで働きたいんだけど。家の近くにある、あの店だよ」

びっくりした。娘が面接を申し込んだ店の男性経営者とは面識があったからだ。

 

かつて、その男性が従業員として働いていた福岡市西区の「大地のうどん」には、家族3人で何度も通った。いつも、妻は「わかめうどん」、僕は「ごぼう天うどん」を注文した。

 

2007年、男性は「大地のうどん」の味を引き継いで独立。そんな歴史を知らない娘が、ネットの求人情報を見て、彼が店主を務める「うどん和助」(福岡市城南区鳥飼)で、人生初のアルバイトを始めた。

 

僕は、飲食店で働く娘の姿を初めて見た。

涙が出そうになった。保育園の運動会で走っている娘を見たときと似たような感覚だった。

 

「うどん和助本店」で働く娘(2021年6月30日)

 

席に座ると、娘が注文を取りに来た。

ドキドキした。

なぜか、お互いに敬語を使っていた。

 

2021年6月30日。

和助とのご縁と娘の成長を感じた日。

パパは、この日をずっと忘れない。

 

ごぼう天の大きさに驚く娘。「大地のうどん」で(2007年7月23日)

 

千恵はいつも、わかめうどん(2007年7月23日)