グリーフ(悲嘆)を語り合う

 

講演の後、著書「はなちゃんのみそ汁 青春篇」にサインを求められることがある。最近、好んで書くフレーズは「悲しみを生きる力に」。昨年、本の出版を記念して福岡市の書店で開いたワークショップで気づかせてもらった言葉である。

 

ワークショップのテーマは、「大切な人を亡くした後、あなたはどう生きますか」。死別体験者ら約30人と「グリーフケア」について語り合った。

 

 

涙をポロポロとこぼしながら、8年前に亡くした母親との思い出を語る女性。妻をがんで亡くし、男手ひとつで2人の娘を育てている会社員。重い病の祖母と離れて暮らしている大学生は、「いつか別れが訪れる。その別れを想像しながら、大切な人と今どう生きるかを考えたい」と打ち明けた。

 

参加型のワークショップは一方通行の講演会と違って、双方向の対話によって成立する。正直なところ、人が集まるのだろうかと不安でいっぱいだったが、ふたを開けてみると、会場には定員を超える参加者が集まった。年齢層は10代から70代の男女。東京から駆けつけた会社員男性もいた。

 

会場全体がやさしい空気に包まれていた。みんなが目を潤ませながら笑っていた。死別や悲しみを語り合うことはタブー視することではなかった。人の悲しみに寄り添える場が、もっと世の中に広がれば、と思う。