暮らしが学びの場

 

僕は小学生のころ、「福沢諭吉になりたい」という作文を書いて新聞に掲載された。

おそらく、伝記を読んで感動しまくったのだろう。

その作文を引っ張り出して、読み返した。

脳みそがシンプルだなあ、と思った。

 

でも、着眼点はいい。

先見性もある。

なにしろ、諭吉は1万円札になったのだから。

小学生の自分を褒めてあげたい。

 

亡き妻千恵は、3歳の娘に、諭吉の著書「学問のすすめ」を読み聞かせた。

「3歳児には、意味わからんやろっ」と突っ込みたいところだが、

同じ諭吉ファンとして妻の気持ちは理解できる。

1万円札は大事だが、学問はもっと大事。

 

シングルファーザーになった僕は、子育てをする上で、心に決めていたことがあった。

矛盾するようだが、娘に「勉強しなさい」と言わないことだ。

学習塾にも、本人が「行きたい」と言い出すまで行かせなかった。

小学校の担任が「塾に行かなくて、大丈夫ですか」と心配していた。

 

無理強いはしたくなかった。

ただ、成績は悪くてもいいが、勉強嫌いにはなってほしくなかった。

人は一生、勉強と付き合っていかなければならないのだから。

夢や目標ができたり、あることに興味が湧けば、子どもは勝手に勉強を始める。

 

暮らしが学びの場だった。

親は先回りせず、1人でやらせてみる。

小さな成功体験の積み重ねが、「やればできる」という娘の自信につながった。

幼少期に必要なのは、そうした土台づくりだと思う。

 

千恵とピアノを弾く娘(2007年10月3日)

千恵の指先をじっと見つめる娘。見るのも勉強(2007年10月3日)

お絵描きも勉強(2007年10月3日)

買い物も算数や社会の勉強(2007年3月8日)

 

 

以下、千恵のブログ。

似たもの夫婦。

今さらだが、16年前、千恵が「諭吉の言葉」を娘と共有してくれたことがうれしい。

 

諭吉の言葉(2007年2月16日)

 

さっきまで、娘と本を読んでいた。

その中に、諭吉の言葉があった。

そう。「学問のすすめ」だ。

本の中には、短歌や俳句など、いろいろな言葉があったけど、

今の私にこれはびびっときた。 

 

「学問のすすめ」

天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らずと言えり。

されば天より人を生ずるには、万人は万人皆同じ位にして、

生まれながら貴賤上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きをもって

天地の間にあるよろずの物を資(と)り、もって衣食住の用を達し、

自由自在、互いに人の妨げをなさずして

各々安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。

されども今広く この人間世界を見渡すに、

かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、下人もありて、

その有様雲と泥との相違あるに 似たるは何ぞや。

その次第甚だ明らかなり。

実語教に、人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なりとあり。

されば賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとに由(よ)って 出来るものなり。

 

思わず、娘を前に、声を出して2回も読んでしまいました。

つまり、こういうことです。(By 博多弁)

 

天の神様はくさ、人間ば造る時にくさ、上下関係なんか関係なく平等に造るったい。

やけん、人間はみんな同じレベルでくさ、金持ちも貧乏も関係なかと。

天からもらった身体と心でくさ、平等に天と地の物をいただくったい。

それで、衣食住を満たしてくさ、みんな自由な心でくさ、お互いに人の邪魔とかせんでくさ、それぞれ幸せに生きていくったい。

 

だけどくさ、周りば見渡してみたらくさ、なんかこの差は?

頭のよか人と、ばかな人とおってさ、貧乏人もおれば金持ちもおるったい。

貴族もおれば、召使いもおる。

その差はくさ、雲と泥くらい違うったい。なしやろか?

理由はくさ、簡単なことったい。

平安末期から明治初期まで使われとった教科書にくさ、「実語教」っちゅーとがあるんよね。

それにくさ、「人間は、勉強せんかったら賢くなれんと。賢くないってことはくさ、ばかっちゅーことなんよ」って書いてあるったい。

だけんがくさ、賢い人と愚かな人の差はくさ、勉強するかせんかで決まるっちゅーことたい。

 

もう、心の琴線にふれまくりです。

中高校時代に「びびびっ」てきてほしかったな。 

彼がいたから、今の日本がある。

日本で1番位の高いお金=1万円札になるっちゅー話です。

 

天からもらった大切なこの身体。

私ひとりのものではないんだ。

 

健康な身体と心をもらったはずなのに、知らないことが多すぎて、

私は途中でくじけてしまった。

けれども。 人生、やり直しはできる。

 

さあ。

今日もひとつ、心の琴線を動かしたところで。

より良く生きるための勉強を進めるとしますか。

 

写真:今日のアレンジメントの作品。われながら、お気に入り。1500円でこれだけのものができるなんて、ブラーヴァ。花は人に、無償の癒やしや愛情を与えるだけ。花のような人になれたらいいな。