葛藤との闘い

 

がん闘病中の千恵は、食事療法を大切にした。

抗がん剤の治療効果を上げるためには、

食事で体温を上げ、血圧を整える必要がある。

 

「灰がたまったストーブでは薪は燃えない」

人の体も同じだ。

千恵は、薬の副作用で便秘気味になったため、腸内環境を整える食事をした。

しっかり食べて、しっかり出した。

マクロビオティックや玄米和食などの食事療法は、がんを縮小させるための直接的な治療ではなく、治療環境を整えるための手段と考えていた。

 

リラックスする。笑う。

副交感神経優位の状態を保つため、食だけでなく、心の持ちようも大切にした。

がんの克服を目指し、生きていくための基本を忘れないよう心がけた。

 

よく誤解されるが、現代医療を否定していたわけではない。

葛藤を抱え、涙を流しながら、必要なときは、抗がん剤を受け入れた。がん治療は、是か非かではなく、葛藤との闘いなのだ。

 

かつて、僕たちは「代替療法を美化している」「判断が間違っていた。あの夫婦は自業自得」などと、ネット上でたたかれた経験がある。肺に転移したがんが消えた後、標準治療を一時中断した時期があったからだ。

 

薬の副作用は容赦なく襲いかかった。家族のひとりとして、治療の強制はできなかった。

30代前半という年齢でのホルモン治療は、気分の落ち込みや不眠など心の症状を訴える患者が少なくない。千恵も鬱(うつ)の症状に苦しんだ。長期にわたって治療を継続していくためには、ときには「休む」という選択が必要な場合もある。

美化でもないし、誘導でもない。

生きるために、どうすればいいのかを考え抜いたうえでの判断なのだ。

どうか、がん患者とその家族の心情をご理解いただきたい。

 

 

 

2006年12月17日付の妻のブログは「免疫療法に関して」。がんの標準治療には触れてないが、同年5月から、抗がん剤治療を再開している。

 

免疫療法に関して(2006年12月17日)

 

私はこのブログを通して、がんの患者さんはもちろん、がんではない人にもわかるような食事療法や免疫療法を紹介していく予定だ。

でも、注意してほしいことが、ひとつだけある。

これは、一患者の体験記であるということ。
私は医療者ではない。

今後、科学的に私のやっていることが証明されるわけでもない。

西洋医学を否定するつもりも毛頭ないし、免疫療法の良さは十分理解しているけれど、それを人に強要はしない。いや、できないのだ。


なぜなら、がんという病気は、人それぞれに全く違うものだからだ。
がんが出来た部位が異なれば、がんの種類も、悪性度も、治療方法も、全く違う。

要は、私に効いたからといって、全てのがん患者さんに効くわけではない、ということだ。

私の噂を聞いて、今までにも数多くのがん患者さんから、「一体どんな治療をしているんですか?」「どんな免疫療法をしているんですか?」と質問を受けてきた。


もちろん、その時々で、実行していることをきちんとお伝えしてきた。
でも、全部の人が理解してくれたわけではなかった。


中には、露骨に「そんなもので、がんが治るの?」という人もいたし、きょとんとした顔で、「そんなので治るわけがない」ということを言う人もいた。

私には確かに、今続けている食事療法、温熱療法、気功、音楽療法、半分マクロビオティック生活が効いている。


確実に解放されていく痛みと、良くなっていく体調を実感しながら、そう思っている。
だから、今後も続けていくし、他にも合う方法があればどんどん試していくつもりだ。

 

マクロビオティックの久司道夫氏によれば、マクロビオティックは、宇宙の陰陽の原則に従って、全ての病気と心を調整し、治す方向へと導くという。

 

ただし、それを本当に理解し、納得し、続けていかなければ、どんな方法であれ、効かない。

特にがんは、それまでの悪いものを全て排出してしまうのに7年はかかるとも言われる。

人の弱みにつけこんで、がんの特効薬が世の中にははびこっている。

しかし、世界中どこを探しても、特効薬などないのだ。

 

今までの生き方の間違いで、人は病になる。

それならば、それまでの生き方を見直し、変えていかなければ。

自分の足で、自分に合う方法を探し、実行する。

 

生き方を変え、考えを変え、運命を変えていく。

それしか、病気を克服する手段はないと思う。