卵かけご飯の作り方
夕食の準備をしてなかった夜。
時計が20時を回ったころ、アルバイト帰りの娘がフライドチキンを買ってきてくれた。
いつもように、彼氏のねすたも一緒だった。
とりあえず、主菜ができた。助かった。
コンビニの食品だが、たまに食べると、これが案外うまいのだ。
さて、もう一品ほしいところ。
ぱぱっと、ツナサラダを作ったが、それでも食卓が寂しい。
「今夜は、何にもなくてすまんな」
僕がそう言うと、ねすたが「僕は卵かけご飯が食べたいです」。
お前はなんていいやつなんだ。
卵は価格の優等生。
頭を「よしよし」したくなる。
ご飯が炊けた。
ねすたが炊き立てのご飯に生卵を落とそうとしたら、
「ちょっと待って」と、娘がご飯茶碗を取り上げた。
「先に卵を溶いて、その上に熱々のご飯を広げるようにのせるの。しばらくしてかき混ぜる。おいしいからやってみて」
僕が娘に教えた卵かけご飯の食べ方だった。
ご飯の「あとのせ」は、生卵を上から蒸すような状態になり、ところどころ半熟になる。
どっちが先でもいいのだが、娘はそれが正しい食べ方と思っているのだろう。
ねすたは戸惑いながらも、「うん」と素直にそうしてくれた。
育った環境が違うと、卵かけご飯の作り方も違う。
ひとつ気付かされたのは、ねすたが謙虚で素直な性格であること。
そういえば、彼の口から「でも」という接続詞や相手の考えを否定する言葉を聞いたことがない。
娘とねすたは出会って1年。これまで一度も喧嘩をしたことがないそうだ。
若い2人には、教えられることが多い。
ねすたはご飯にクリームシチューをかけて食べる。これも育った環境か。