二日酔いの朝

 

頭が痛かった。

夏風邪でもコロナでもない。

飲みすぎたのだ。

 

昨夜、なじみの店「Public bar Bassic.」のオープン14周年を祝って仲間たちが集まった。

親不孝通りのロックレジェンドたちとテーブルを囲み、楽しすぎて、飲みすぎた。

ハイボールを何杯飲んだか覚えてない。

 

 

それでも、いつも通りの午前6時に目が覚めた。

娘は朝から服飾店でアルバイト。

弁当を作る約束をしていたので、

ふらつきながらも台所に立ち、娘が出かける前までに、なんとか作り終えた。

 

 

再び、ベッドに横になると、バイトに向かう途中の娘からLINEでメッセージが届いた。

 

 

昨夜、娘の彼氏ねすたが、シチューを作ったらしい。

ねすたは一人暮らし。料理が苦手だった。

娘と付き合い始めて、最近、自炊に目覚めたそうだ。

 

 

冷蔵庫に、ねすたが作ったシチューが入っていた。

1人分、残しておいてくれたのだ。

 

鍋を火にかけ、シチューを温めながら、どの器で食べようかと考えた。

ふと思いついたのが、娘が5歳のときに保育園で作った焼き物である。

花の絵が描かれた黄色い茶碗。

15年間、なぜか一度も使わないままだった。

 

 

シチューには、鶏のムネ肉が入っていた。

ねすたにハムを作ってあげようと思って、冷凍庫に保存していたものだった。

他の食材もそうだった。

あるもので作る。いい心がけである。

 

食べる前に妻の遺影に供えた。なぜか、1人でうるうるした。

 

二日酔いの胃には、ちょっと重そうな気がしたが、あっという間に完食。

ねすたの料理を食べたのは、初めてだった。

 

ありがとう・・・。

全部食べると、急に元気が出てきた。

 

台所で食器を洗いながら、足元を見た。

ゴミ箱にシチューの空き箱が捨ててあった。

 

たぶん、このルウを使ったのだろう。

そう思って、箱を手にすると・・・・

 

 

賞味期限は2年前に切れていた。