森見さんの作品と言えば、

「夜は短し歩けよ乙女」

が有名ですね。

私もこの作品から入りました。


独特の文章で、読者を選ぶかもしれませんが、じっくりと味わい、この作品世界に入ってしまえば、もう術中にはまったと言えるでしょう。

 

ということで、本作「夜行」。

全く先入観なく読みました。

この作品、ホラーテイストです。

 

京都の鞍馬で長谷川さんという女性が突如として消えてしまいます。

そして、10年後に当時の仲間が集まって、それぞれの旅先での出来事を披露していくうちに、長谷川さんの失踪とつながってくるというストーリーなのですが、個々の作品の旅先が、乗り鉄の私にとって、いかにもという場所ばかりなのです。

尾道、奥飛騨、津軽、天竜峡そして最終章の鞍馬となるわけですが、この場所を聞いただけで、鉄道ファンが行きたくなる場所ばかりという側面があり、また、私自身全て訪れている場所ということもあり、情景が目に浮かぶようでした。

 

少々私の旅の記憶も含めて綴ります。

・尾道

少し前に尾道については、別稿で綴っていますが、坂道が素晴らしい町ですね。個性的な踏切、千光寺そして幹線らしくひっきりなしに通る電車や貨物列車がホラーテイストで登場します。

観光で行くと、明るいイメージの場所ですが、白黒反転でホラーなるところは感服しました。


・奥飛騨

これ、高山に行っているのになぜか鉄道ファンじゃないと知らないような猪谷駅まで足を延ばしてしまってます。

奥飛騨の温泉に行くのに猪谷はないよなあ。と思ってしまいます。

前回の「北陸応援の旅」で綴っていますが、高山から猪谷への道中は、とにかく山深い。これを鉄道と道路で行くという情景が旅情ではなく、怖さを感じさせます。


・津軽

津軽までは、最近まで走っていた寝台特急「あけぼの」で向かっています。もうこれだけで旅情たっぷりなわけですが、真冬に上越線経由で上越国境を超えるところで例の川端康成「雪国」の描写があり、津軽鉄道ではストーブ列車の登場ありで、本筋と関係ないところで、読み応えがありますね!


・天竜峡

飯田線を持ってくるあたり、森見さんの乗り鉄ぶりが垣間見れます。

これを読みながら、私は飯田線にどれくらい乗ったかと思っていたら、なんと4回も!乗っていたのでした。

それも乗り通した回数です。

 

思い返してみると、私が飯田線に乗った時は、仕事が多忙な時や、詰まっているときにあえて息抜きに乗っていたことに思い至りました。

飯田線を乗り通そうとすると、ほぼ一日がかりになってしまいます。それでも6~8時間の行程を乗り通すだけで、非常に気分転換になるのです。伊那谷の河岸段丘から山々を望み、天竜峡と進み、風景描写もあって、また乗りたくなってくるような章でした。

 

・最終章(鞍馬)

叡山電車が登場します。この鞍馬から京都市街地に戻るところで、この物語の決着となるわけですが、なんか紀行文とホラーの両方を楽しめたような作品でした。


ネタバレになるので詳細は書きませんが、なにが本当でなにが別の時間線なのかわからなくなってしまいます。それぞれの旅先とあわせて楽しめます。

 

それにしても自分ながら、全部の場所に行っており、その描写が私の印象そのものというところがまた読んでいて、楽しかったです。