彩坂美月さんの連作短編集です。

主人公の有馬さんは実家で不幸があって帰省しています。そこで地元の友達と再会し、過去の出来事を思い出しながら当時の謎を解いていく、というストーリーです。

ネタバレとなるので行を変えます。












まずは第四章までは、いわゆる日常の謎系で、ちょっとしたことから以前の出来事を思い出しながら謎が解き明かされると言う定番の流れです。

一応は各話ごとに謎が解けるのですが、そのお話の中で違和感や東京にいる彼氏との関係等なんとなく消化不良を感じました。
そして最終章で、この違和感が解消というかひっくり返リます。

登場人物も普通の人達で安心して読めるのも良いです。

この手法は、90年代から続く日常の謎系の連作短編集の様式美を感じました。

若竹七海さん、加納朋子さんもこの手法で大成功してますね。ストーリーや背景は全く違いますが、山田正紀さんの同時期のミステリ「人喰いの時代」もこの作品の展開に似ています。


この彩坂さんの作品を読むのは2冊めです。
私にとって新しい作家さんの本を手に取るきっかけは、ネットでのおすすめやアンソロジーの短編で面白かった時に調べてみて興味を持ったらいくつか読んでみようと思うことが多いです。
デビュー作の「未成年儀式」を読んで次回作も読みたくなったことが本作を読んだきっかけとなります。今作品を読んで全部読んでみようという思いを持ちました。正直なところ、私が好きな作家さんの恩田陸さんや東野圭吾さん、辻村深月さんほどのインパクトは感じないところもあります。

それでも読後感がよく、今後も期待して読みたいと思わせる作品だと思い、今後も応援したい作家さんに感じました。

さて、またまた鉄道ネタとなります。
本作の舞台はY県天堂市となっています。
ただどう考えてもこれは山形県天童市ですね。
前回ご紹介した「新幹線がなかったら」でミニ新幹線、つまりこの山形新幹線や秋田新幹線のことが言及されていました。
正確には在来線に新幹線が乗り入れているのですが、新幹線が直通し東京との距離が縮まったことが、本作の根底にもあることを感じました。