前回に続き辻村深月さんの作品です。

この作品、読む前まで大きな誤解をしていました。
カタカナでハケンアニメとあり、お仕事小説とも紹介があったので、アニメ業界で働く派遣社員の小説かなと思っていたら大間違い!

アニメの覇権をどの作品が取るかというアニメ愛に溢れた作品でした。


章ごとに主人公となるそれぞれの女性の目線で話は進むわけですが、ある章でちょっと嫌な奴と思っていた人が実はそんなことなかったり、ちょっとズレているような人が次第に好感を持てるようになったり、アニメ制作の現場で本当に起こっているような臨場感ある描写に400ページ超の長さでもそれを感じないくらいあっという間に読み終えました。


アニメ制作の裏話的なことの数々も描かれていて、現場の大変さをも感じました。


アニメ制作現場の話ではありますが、どんな業界でも表現が違うだけで同じように仕事に熱く取り組んでいる人の姿は心に響きます。

特に第三章の公務員さん。

タイアップした炭酸飲料を汗だくになって運んでいる場面には、そうそう!これが大事なんだ!と大いに共感したりしました。


私自身の話になりますが、外食の世界で30年以上働いてきました。

今でこそ、だいぶ改善されてきましたが、休みは取りづらく高収入とも言えません。

それでもやっぱりサービス業が好きで、食べ物が好きで、お客様の笑顔に救われる現場が好きで今までやってきたつもりです。

私は高い地位で仕事ができたわけではありませんが、やはり仕事に愛と情熱がある人は一目置かれます。そしてそれをやり切った人にしか見えない風景があります。

そんな風景を今作品は見せてくれました。


決してがんばったからといって必ず報われる訳ではないことはどの世界でも一緒です。

でもこの作品世界で共有した想いは、それでも明日からもまたがんばろう!と元気をもらえる1冊だと思います。


ちなみに本作では他作品のあの人が登場します!