イラスト:旭炬

 

アステート公国王太子:フェルナード

エルゴル国王女:イザベラ

 

〇あらすじ

天使の歌声、歌姫と名高い小国エルゴルのイザベラ王女は、大国アステート公国の王太子との結婚が突然決まった。

それは、同盟国だったにもかかわらず、父王による裏切りによりアステート国に捕らわれ、その命を救うべく交換としてイザベラと王太子フェルナードとの政略結婚が条件だった。

 

軍事大国の王太子と小国の王女との婚姻は、不自然だったがアステートの目的はイザベラの歌声だと思われた。ところが、肝心のイザベラは二年前のアステート国への慰問から帰ってきてから人前で歌えなくなっていたのだ。

それというのも、二年前、対応してくれた兵士の冷たい態度と、舞台の上で「下手くそ」とヤジを飛ばされたことから、イザベラは自信を失ってしまったのだった。

父の命を救うためにもそのことは秘めたまま、イザベラはアステート国に赴いた。そして、初めて対面したフェルナード王子は、二年前の訪問時に対応してくれた兵士だった。

 

裏切り者の王の娘への風当たりはきついものと覚悟をしていたが、王太子はイザベラに一言も声はかけず、彼の側近からは立場をわきまえて、王子の盾となれと仮初の婚約者であることを言いつけられた。

そして、戦神と名高い美貌の王太子を慕う貴族令嬢からの虐め、はては、結婚式までが延期になってしまった。

 

そんなイザベラを令嬢の虐めから救い出してくれたのは、ほかならぬ婚約者のフェルナードだった。

フェルナードは、イザベラに自身の秘密を打ち明ける。実は、戦闘で喉を傷つけられた彼は、声が出せなくなっていたのだった。

側近からは、フェルナードを慕う兵士は多いが、それでも王位を狙う輩は多く、その政敵からの目をイザベラ向けて盾としようというのが狙いだったと聞かされたが、フェルナードのイザベラへの態度は優しいものだった。

そんな優しく気遣ってくれるフェルナードのためにも、イザベラはなんとか歌を歌えるようにと練習を繰り返すのだった。

 

〇感想

面白かった!

最初はイザベラ姫側から話が進むので、じれったいんですが、それでも王子が姫様を好きなんだろうなってのはわかります。しかし、その惚れこみ具合が半端じゃなかった。

フェルナード王子、軍事大国の王太子は伊達じゃなく、本性は冷酷で容赦がありません。貴族令嬢たちは、美麗な容姿に騙されておりますが、軍関係者は皆知っていて、恐れております。

 

半ばぐらいから、王子側の事情もはさんでくるのでわかってくるのですが、後半からのネタバレがすさまじかった。

二年前、イザベラが来たときは「面倒だな」ぐらいの印象だったんですが、イザベラの歌声を聞いて心揺さぶられた王子が暴走します。

まず、「下手くそ」と言ったのは王子でした。いわゆる「好きな子をいじめる」的な感じだったんですね。この悪行は皆に責められて罰を受けております。

次にイザベラに会いたくて、仕事が終わった後に隣国に通い詰めるというストーカー行為。

そして、正式に王家への婚姻の打診。しかし、国力の違いから身分差がありすぎると断れてしまいます。

 

どうしてもイザベラが欲しい王太子は、ここで本性を発揮。なんと、イザベラの父王は裏切り者の汚名を着せられて捕縛されてしまうんですねー。はい、全てはフェルナードの企みでした。

政略結婚という形をとってしまえば、国からも反対は出ないし、イザベラも断れないだろうという計算です。

イザベラの父王も、そこまで好きならしょうがないとイザベラを送り出したんですね。いや、もうちょっとフォローしてあげてよ。イザベラ可哀そう。

 

このフェルナード王子の惚れこみ具合を知らないのは、貴族令嬢たちと、イザベラ本人だけという。ええ、エルゴル国民でさえ、イザベラをつけまわすフェルナードを知っているんですね~。

イザベラをいじめた令嬢たちをフェルナードは、どっかの修道院に入れてしまえとか、混乱に乗じて始末してしまえとかかなり過激なことを言っております。部下に王女が悲しむよと言われて断念しておりますが。

 

ちなみにイザベラの歌声は本当にすごくて、戦争を止めるぐらいの威力があります。ただ、本人は自覚がありません。

しかしながら歌声と違って彼女の容姿は普通なので、そこのところも好感が持てました。

 

冷酷な王太子が、初恋に暴走するさまが面白くて、振り回されっぱなしに見えるイザベラも、酒に酔った時は逆になったりして、楽しかった。

あ、でも濡れ場はないので、そっちに期待はしないでください。