◆化学物質過敏症にはデビューがある
50歳になって花粉症になった人があります。
50年以上前からスギ花粉は飛んでいたのですが、
花粉症は発症していませんでした。
「コップ理論」という仮説があります。
コップに水を入れていると、あるとき一杯になってあふれるように、
花粉にさらされていると、あるとき体の許容量を超えて
花粉症が発症するという理論です。
花粉症になったときを「花粉症デビュー」とも言います。
化学物質過敏症も、同様なことが言えます。
化学物質に暴露されて、体の許容量を超えたとき、
「化学物質過敏症デビュー」ということがあります。
化学物質を身の回りにあふれており、完全に避けることは不可能です。
しかし、花粉症と比較すると、化学物質過敏症はあまりにも被害が甚大です。
少しでも減らしてデビューを避けたいものです。
◆吊り下げ式殺虫剤
「バポナ」という吊り下げ式の殺虫剤は、
ハエ、蚊、ゴキブリをターゲットに、トイレ、倉庫などで使用されています。
有効成分の「ジクロスボス」は神経毒性が強く、頭痛、息苦しさなどの原因になります。
「アース虫よけネットEX」は、ピレスロイド系の殺虫剤です。
無臭ですが、目、鼻、のどを刺激し、吐き気、めまい、頭痛を引き起こします。
玄関に蚊が群集していて困ったことはありませんか。
そんなとき、これが吊るされることがあります。
◆噴射式殺虫剤
蚊やハエが飛んでいたり、ゴキブリがはっていたりすると、
噴射式殺虫剤でシューーしたくなります。
これらの殺虫剤の多くがピレスロイド系殺虫剤です。
◆無臭でも危険
ピレスロイド系の物質は無臭のものが多く、安全という印象を受けがちです。
「ニオイがつかないムシューダ」は、ナフタレンやパラジクロロベンゼンと比べて
ニオイがないため、よく売れています。
しかし、安全とは限りません。
衣類が虫に食われた方がいいかもしれません。
ニオイのない「アースノーマット」も、蚊の襲撃を避けるために使いたくなりますが、
夜中ずっとピレスロイド系を吸っていることになります。
昔ながらの蚊取り線香の方がましかもしれません。
「化学物質を気にしていたら生きていけんやないか」と憤慨されるかもしれませんが、
世の中には「化学物質過敏症で生きていけんやないか」と嘆いている方も多くあります。
コップにたまる水を少しでも少なくしたいものです。
参考文献
1)水城まさみ、小倉英郎、乳井美和子:『化学物質過敏症対策』,緑風出版,2020
2)加藤やすこ:『新 電磁波・化学物質過敏症対策』,緑風出版,2020