「心身症」という用語があり、
精神的なストレスが原因で胃潰瘍なる場合を言います。
心と体は密接不可分と言われ、切っても切り離せない関係があります。
今回は「好意」と「敵意」について考察いたします。
◆ファン
巨人ファンは巨人というチームに好意を持っています。
巨人が勝つと一日楽しく過ごせ、巨人が負けると暗い心になります。
反対にアンチ巨人の人は、巨人に敵意を持っています。
巨人が負けると愉快であり、巨人が勝つと面白くありません。
大谷選手のファンもそうでしょう。
大谷選手の活躍は、自分のことのように嬉しくなります。
大谷選手を打ち取ったピッチャーに対して敵意を感じます。
娯楽なら「敵意」もそれほど体に影響はないかもしれませんが、
日ごろの人間関係においてはどうでしょうか。
◆好きな上司と嫌いな上司
人間は感情の動物ですから、職場においても「好意」と「敵意」が入り乱れています。
好印象の上司に対しては、「この人のためなら頑張る」と「好意」を持つでしょう。
嫌な上司に対しては、「この人の成果になるのならやりたくない」と
「敵意」を抱くかもしれません。
好きな人の喜ぶことをしたい、嫌がることはしたくない。
嫌いな人のためには働きたくない。
これが人情でしょう。
その是非はさて置いて、好意を抱いた時と、敵意を持った時とでは、
体に違った影響を及ぼしいます。
分かりやすく言うと、
態度を硬化させると動脈も効果し、
柔軟な対応をすると動脈も柔軟になります。
◆夫婦喧嘩で動脈硬化
ユタ大学で、150組の夫婦に結婚生活について議論してもらい、
長期にわたってそれを分析するという研究が行われました。
その結果、敵意のあるやり取りをしている夫婦では、
とくに奥さんが、心臓を栄養している動脈が硬くなる率が高く、
中には石膏ボードのような硬さになっていました。
夫婦という近い関係では、つい、思いやりの心を忘れ、
言いたいことをポンポン言ってしまいがちです。
「馬鹿か!」と、他人には決して言わない禁句も出ることがあるでしょう。
「敵意」のこもった言葉は、言った人も、言われた人も、動脈硬化につながります。
逆に、思いやりのこもった優しい言葉によって、動脈が柔らかくなります。
これはオキシトシンというホルモンの効果です。
ケンカは、売り言葉に買い言葉で、どんどんエスカレートし、態度が硬化します。
意見の衝突は、すり違えない一本橋の真ん中で、突き当たったことに例えられます。
「お前が下がりなさい」「そういうあなたが下がりなさい」と
態度を硬化していると、動脈も硬くなります。
「私が下がります」と態度を和らげると、動脈も柔らかくなります。
「怒りは敵と思え、堪忍は無事長久のもとである」と家康の名言にもあります。
思いやりのある柔軟な態度で、血管を柔らかくしましょう。
参考文献
1)デイビッド・ハミルトン:『親切は脳に効く』,サンマーク出版,2018