悲しみが多いほど 優しくできる | 健康は みんなのもの ~皮膚科医のブログ~

健康は みんなのもの ~皮膚科医のブログ~

     一口サイズの健康情報を
        日々発信いたします
           病気で苦しむ人が
              いなくなる日まで

◆親切までの3段階

他人に親切をすると、うつの症状が軽くなると言われています。
親切するまでに3つのステップがあります。

①共感
②思いやり
③親切

共感が思いやりに発展し、親切へつながるプロセスは、

種が育ち花が咲くようなものです。
それぞれどういうことでしょうか。

①共感

共感とは、相手の苦しみを自分に引き当てて感じることです。
子どものころ、学校でいじめがあったとき、

「自分がいじめられたらどう感じるか。考えてみましょう」

と先生から言われたことがあります。
 

「ばい菌」「汚い」と言われたら、どれだけ傷つくか。
上履きやノートを隠されたら、どんな気持ちがするか。

「自分がその立場だったらどう感じるか」が「共感」ということでしょう。

自分が災害に遭ったらどんな心になるかが、被災者に共感するということです。
自分が病気になったらどんな気持ちになるかが、患者に共感するということでしょう。

②思いやり

思いやりとは、
「相手が苦しみから解放されてほしいと願うこと」と定義されています。
被災地で「体育館で寝泊まりしている」「2週間も風呂に入っていない」という話を聞くと、

どこか温泉でゆっくりつかり、温かいところで休んでほしいと願います。
これが「思いやり」ということでしょう。

③親切

相手の苦しみを実感し、苦しみから解放されてほしいと願い、

自分にできることはないかと実行するのが「親切」です。

◆共感が大切

何気なく行っている親切も、この3つのプロセスを経ていることでしょう。
一番大事なのは、最初の「共感」でしょう。
これがなければ、2も3もありません。

雪道でタイヤがはまって車が動けなくなっているのを見たとき、

過去に同様の体験があると共感しやすいでしょう。
そう考えると、
困った体験、苦しんだ経験が多いほど、

他人の苦しみを共感できるようになります。

「暴言を言われて傷ついた」
「理不尽なことをされた」
「たくさん病気をした」

共感できるほど、人に親切ができるようになるのではないでしょうか。
不朽の名曲『贈る言葉』の一節、

“人は悲しみが 多いほど 人には優しく できるのだから”

は、このことを言っていたのですね。

参考文献
1)デイビッド・ハミルトン:『親切は脳に効く』,サンマーク出版,2018