初めまして、留学を終えて花木ゼミにQ3から加わりました、太田です。今回のブログは、太田、汲田、山本が担当します。

今回は、英語ニュースを3つと「これからの『正義』の話をしよう」7章について、帰国したゼミ生も新たに加わっての議論でした!


はじめに、太田が担当します。

1つ目の記事はナゴルノ・カラバフの地域でアゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突についてでした。

前提として、ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャン領ではありますが、すんでいる人々はほとんどアルメニア人です。そのため、衝突が起きた際にナゴルノ・カラバフのアルメニア人の大半はアルメニアに避難しようとしました。


今回取り上げた記事によると、アルメニアに避難しようとした人々は1万3000人にのぼり、ガソリンスタンドの爆発などによって死者は100人を超えているという内容でした。

質問としては、第3者の立場としてはどのように行動するべきか、もし自分がアルメニアの人だったら避難してきた人たちを受け入れるか、の2つについて議論しました。

1度介入したのなら最後まで責任を果たしたり、2国間の交渉を促したりすべきであるという意見がでました。また、避難民を受け入れるかどうかについては受け入れるという意見が多かったです。理由としては、避難民のほとんどはアルメニア人であり、歴史的背景・文化は同じであるからというものがありました。


最後にこの2国間の軍事衝突と、ウクライナ・ロシア間の戦いの違いについても話し合いました。前者はただ2国間が争っているだけであるが、後者はこれを許してしまうと中国・台湾問題など世界に大きな影響を与えるために多くの国が介入しているのだという話にまで発展しました。



続いて、ここからは汲田が担当します。

2つ目は、全米自動車労働組合(UAW)が起こしたストライキに関する記事です。UAWが米国大手自動車メーカー3社に対して40%の賃金値上げを求めたものの交渉が失敗に終わったことを理由に、3社のメーカーで働く約13000人の労働者がストライキを起こしました。


米国ではCEOの給与に関して、海外と比べて基本給はある程度同等であるものの変動報酬(業績など条件に応じて変動する報酬額)の規模が大きく異なる点と、彼らの給与を管理する法的メカニズムがない点で、米国のCEOが海外の幹部よりもはるかに多くの額を稼ぎやすく、そしてそのことが労働者とCEOとの間の経済的格差の原因の一部になっているとのことでした。

そこでまず、米国で広がる経済格差是正に向け、CEOの給与をある程度制限すべきかどうかについて議論しました。ゼミ生の多くはCEOの給与に制限が必要だと答え、CEOの給与を制限しその分社員の賃金を上げることで会社として社員の生活を支える役割を果たすべきだ、CEOと社員の給与における比率のギャップを埋めるべきだという意見が出ました。一方で制限は不要だと答えた人は、能力やスキルにおいてCEOと労働者では異なるためある程度給与に差を設ける必要があると話していました。また、制限するにしてもCEOのモチベーションを保てるように工夫する必要性を訴えるゼミ生もいました。

さらに、業績に応じて給与が大きく変動する変動報酬をどう思うかについて話し合いました。ゼミ生の中では変動報酬に反対の立場をとる人が比較的多く、年功序列制でなく成果主義となると、特にスキルについて不安がある人にとって将来の収入が不安だ、きちんと評価されない可能性もある中で業績評価が給料金額に直結することへの不安がある、という声がありました。一方、変動報酬に賛成だと答えた人は、高いスキルをもつ人はそのスキルに応じた高額の給与が支払われる必要がある、社員全体のモチベーションの向上が期待できるという意見を上げていました。

就職活動を本格的に進めているゼミ生が多くいることもあり、近い将来それぞれの身に関わってくるであろう給与制度についての話題だったので、真剣に議論し合えた気がします。


3つ目は、アイルランドの体操競技の式典で参加者全員が授与されるはずのメダルを黒人の少女だけ授与されなかったことに対し少女の家族が謝罪を求めたものの、スポーツ団体が1年半後になってようやく公式に謝罪を述べたということを伝える記事です。この出来事は人種的偏見から起こったということが調停にて明らかになっています。


記事とともに載せられたメダル授与時の映像からは、メダルを渡している団体の人がまるで少女の存在はないかのように隣の子どもにメダルをかけておりそれについて少女の隣の子が不思議そうに見ている様子がうかがえます。

そこでまず、自分がこのような人種的差別を受けた当事者の友達だとしたらどのような対応をとるのかについて議論しました。その差別的行動を批判し団体に謝罪してもらう、という意見が多く出ました。また、自分がその差別を受けた当事者であった場合、団体に対してどのような対応を求めるかについても話し合いました。これについては、まずしっかりと団体に謝罪をしてもらい、メダルを渡してもらい、同じことを二度としないと誓ってもらうなど団体に対して人種差別的行動への反省態度を示すよう求める、という意見でまとまりました。

さらに、自分がもしこのような差別を目撃したらどのような対応をとるのかについても話し合いました。これについては、まず団体に抗議の文書を送り、それでも反応がなければSNSに動画を投稿して世論を味方にするという意見が出ましたが、それではその被害者となった人がその後も周りからそのイメージをもたれ続けることになり、生きづらい人生を送ることになる危険性があるため、出来事について読み手に語りかけるような口調で文のみを投稿するのが最も良い方法ではないかということに帰結しました。


特に最後の話し合いを受け、自分が行動を起こそうとするとき、目の前のことだけでなくその行動がもたらす先の被害についても想像して行動に反映させるべきだと感じました。



『これからの「正義」の話をしよう』の7章は山本舞が担当します。


 今週は、テキサス大学ロールスクールの入学試験で合格した黒人学生よりも高得点を取得した白人のシェリル・ポップウッドが不合格になり、黒人のためのアファーマティブ・アクションに反対したことについて意見を交わしました。

 アファーマティブ・アクションに賛成の人は、黒人に対する過去の行いでできてしまった格差によって、白人は社会で既に恩恵を受けていて、黒人はマイナススタートだから、教育格差を埋める必要があるという、待遇の低さの是正や教育の機会の提供、人権の向上において有効であるという考えが多く見られました。

 次に社会のリーダーの人種が公平な割合になれば、社会のルールを黒人目線で見る人が白人と同じ割合になり、司法の平等が実現できるという考え方です。自然科学や医学では能力がある人が務めるべきだけど、社会的領域や法律を扱う人や政治家は、多様な属性で構成されるべきであるということです。しかしこれに関しては白人の中にも、黒人のために行動したい人はいるのではないかという考えもありました。また社会に出ていったときに、黒人がいる社会で互いを尊重した行動が取れるように多様性のある教育環境も大切であるという考え方もありました。

 このような目的で大学が決めた目的に応じて、その目的に沿うような基準や制度で入学者を決めることは認められるべきであるということも聞かれました。そのため、元々決まってるルールで落とされたシェリル・ポップウッドの主張は試験にギリギリで落ちて、後から言った言い訳であるということでした。

 アファーマティブ・アクションに反対の人は、まずマイノリティの人は人種ではなくただ経済的な要因でテストの点数が低いかもしれないし、シェリル・ポップウッドのように経済的な問題を抱える白人もいるため、アファーマティブ・アクションでは人種だけでなく、育ってきた背景もみることも必要なのではないかという意見がありました。シェリル・ポップウッドは点数を取るために頑張ってきたのに、その頑張りが人種的な理由で砕かれています。また人種で分けるのは差別になるから、親の年収で採用者の枠を考えれば、育ってきた環境が大体わかります。しかし年収以外にも要因があるため育ってきた環境を計ることは難しいです。

 次に直接関係のない白人に過去の黒人差別の復讐をするのではなく、リセットして、差別の歴史からその浅はかさを学ぶだけにするべきという意見です。また差別を是正するための取り組みなのに、差別的な目で黒人を見ていて、黒人差別的な観点で考えられているのがこのアファーマティブ・アクションであるから反対する人もいました。それに関連して、アファーマティブ・アクションをすることで、黒人にも配慮をしていることをアピールしているところが気に食わないという感覚も感じていました。

 もし、医学部に人種選考があったら、是正されて入学した人よりも、学力のあるひとに自分の体を治療してほしいように、法学においても知能の高い人が人を裁いたり擁護したりするべきであるという考えもあります。

 職業に優劣がないから、やりたいことをすれば良いし、黒人も格差があることを自身で受け入れてしまっていて、無気力になり社会に期待を抱いていないからそもそも法学を志さないという見方もあります。この考え方では、白人も自分の立場を考えて、社会から良いとされる職業に就くことを強要されているから、やりたいことをやるべきだと考えられます。

 このようにアファーマティブ・アクションには大学側の意図と人種の問題がありました。


今回も、ゼミ生一人一人異なる様々な角度、観点からの意見が共有されたことで、議論が深まっていき非常に有意義な時間になったと思います。この頃一段と寒くなってきたので、体調に気をつけながらこれからのゼミも楽しんでいきましょう!