今日は、父の歯についてのお話です。

 

 抜歯とは、歯科医療において歯を抜くことなのですが、父の場合は抜かなくても抜けるのです。

 

 そう、歯槽膿漏ですね。

 

 末期といえるでしょう。

 

 父を引き取って、共に暮らしながら介護生活を始めた時は、父の歯は、今ほど少なくありませんでした。

 

 上と下に部分入れ歯は入れていたものの、上も下も、部分入れ歯の歯の数と変わらないほど、自分の歯が残っていました。

 

 なので、歯を磨く時には、部分入れ歯を上下共に外し、部分入れ歯の洗浄と、父の自歯を磨く必要がありました。

 

 重度の認知症である父に対して、父が最も嫌がる行為である歯磨きという行為を行うことはなかなか至難の業で、入れ歯の外し方や、歯の磨き方、嗽の仕方等、スタッフにレクチャーして、統一した手技にする必要がありました。

 

 それでも父は嫌なものは嫌だから、よく声を上げていましたけど。

 

 あ、今も上げていますと訂正しますね。

 

 そんな父の歯が抜け始めたのは、同居開始から半年経った頃でした。

 

 普段通りの生活をしていて、ふと気が付くと、あれ?ここにあったはずの歯がないよ?という具合。

 

 どこに消えたのか不明のままのこともしばしばでした。

 

 入院中には病院から連絡が来て、食事中に抜けましたとか、歯磨き中に欠けましたとか、抜けたように思うのですが見当たらず…なんてこともありました。

 

 レントゲン撮影で胃の内部に歯?らしきものが映り込んだこともありました。

 

 抜けた歯を飲み込んだのでしょうね。

 

 驚いたのは、歯が抜けていくその頻度です。

 

 初めのうちは1年から半年に1本くらいの間隔でした。

 

 それでも健康な歯の持ち主にはあり得ないことですが、それから後、介護生活も丸3年、半年に1本になり、そして4年目からは、3か月に1本、類天疱瘡の入院後、自宅での在宅介護がまだ3か月というところですが、その間に既に3本抜けています。

 

 ひと月に1本のペースですね。

 

 今、父の歯は、下に2本、上に4本のみとなりました。

 

 上の歯の4本というのは、昔父から聞いたことがあるのですが、若いころバイクで事故って前歯が欠けて、人工の歯を入れたと言っていたので、純粋に自分の歯とは言えないと思います。

 

 見るからに、人工らしく見える歯もあり、上の歯の4本というのは正確には不明ということになります。

 

 それに、下の歯の2本のうち、1本はもう間もなく抜けそうな状況です。

 

 以前、歯科衛生士の妹から、抜けそうな歯は飲み込んだり、喉に詰まったり、危険だから、抜ける前に抜くようにとアドバイスをもらっていましたが、今まさに、この歯、どうする?という状況です。

 

 歯茎が下がり、歯が浮くようになって、間もなく抜けるだろうその歯は、まだでもグラグラしていなくて…

 

 父の場合は例え訪問の歯科診療であっても、診察治療を受けるのにかなり高いハードルがあります。

 

 主介護者である私としては、できる限りの対策をして、それでももしもの時は仕方ないというスタンスです。

 

 今の状況からすると、抜けそうな歯の存在を関係者に周知して、皆で気を付けるということです。

 

 歯科診療で抜歯するという選択肢はありません。

 

 父は今年80歳です。

 

 姉妹でも話していますが、もう充分生きたので、積極的な治療はしない方針です。

 

 母の死を目の当たりにして、死を恐れ、死にたくないと言っていた父ですが、今は100%介護が必要な身。

 

 死なせない為の努力はしますが、苦痛を伴う治療までする必要はないと考えています。

 

 何が正解ということはありませんが、常に決めるのは患者や家族です。

 

 医療や介護の従事者は、家族が正しく選択する為の知識や情報を提供し、選ばれた結論、それに従うのみだと私は思っています。