さて、父の入れ歯と食事問題が一段落して、私はふと、退院時の事を思い出した。
退院後の訪問診療で、必ず処方してもらって下さいと言われたっけ。
確か骨粗鬆症の薬で、月に1回服用だったな…
それにしても、退院時にカンファレンスがないというのは本当に不便で、様々な情報共有に障壁が生じる。
この薬の事もそうだった。
退院時に看護師から処方してもらってくださいと言われ、聞きなれない薬だったし、これまで処方に変更はないと聞いていたので、何の薬ですか?と聞いたが、看護師も即答は出来ず、詰め所に走り込んでたっけ。
訪問診療の医師に、病院からの指示を告げ、無事に処方してもらったのだが、訪問診療の医師にも、入院中の詳細な情報は届いておらず、何故この薬が処方されているのか聞いても、わからないとの話だった。
恐らくはという答えは頂いたが、私は父に内服させる薬について、入院中何も聞かされていなかった事に違和感を感じた。
薬というものが、人体に与える影響は大きい。
人の人らしさを破壊する作用を持つ薬すらあるし、投与法やその量を誤れば、命を落とす事さえあるのが薬である。
それなのに、既に様々な重要な薬を内服している父に、月に1回とは言え、全く新しい薬を使うのであれば、一言連絡して欲しかったな~って思った。
このコロナ禍において、入院すれば面会は出来ず、つまりは隔離状態。
病院内で何が行われているかは外部からは分からない。
だからこそ信頼構築の為に、密な連絡が必要なんだけど、感染対策でその手も取られ、嫌なら入院しない事、これに尽きるという事だ。
訪問診療の主治医に処方してもらった薬を、調剤薬局に受け取りに行って、私はその薬の特異性を初めて知ったのだった。
月に1回内服のその薬は、それだけ単独で薬袋に入れられていて、起床時と書かれていた。
いつも処方を受け取る薬剤師からは、服用についての注意事項を丁寧に説明してもらった。
起床時に内服するその薬は、出来るだけたくさんの水分で服用しなければならない事。
服用後は30分間、身体を横にしてはいけない事。
服用は朝の起床時でなければならない事。
服用後30分間は何も飲食できない事。
・・・・・・
絶句。
何だこの薬は。
そんな服用条件の沢山ある薬なんて、過去に経験がなかった。
しかも、何故必要なのかの説明もない。
わからない事を分からないまま、ただ指示通り業務だけ遂行するなんて、私には出来ない。
父の主介護者として、そんな無責任な事出来ないし、ミスの元でもある。
内服日まで指定されていたが、何と週末で、勿論ショート滞在中。
それは流石に無理だと直感的に感じた私は、内服日の限定について薬剤師に問い、1~2日のズレは構わないと聞いた。
丁度皮膚科の専門医受診の予定があったので、ひょっとしてここからの指示だったかも?って思い、受診時に聞いてみよう、内服はその後に判断しようと心に決めた私だった。