さて、父の食事形態と入れ歯について、退院後どうしているかについて触れておこう。

 

 退院当日、私は父と対面し、入歯が入っていない事でのフェイスラインの変化が気になった。

 

 しかし、夕食時、デイサービスの厨房で完全刻み食にしてもらった父の夕食を食事介助していると、父が思いのほかスムーズに食事しているように感じた。

 

 以前は父の部分入歯を入れて、普通食を自分で咀嚼して食べていた父。

 

 同居当初は、自分で食事していたよね・・・介助もほんの一部だった。

 

 あの頃が懐かしい。

 

 私との同居が始まっても入退院を繰り返し、その頃から歯槽膿漏はそれまで以上に深刻で、歯磨きの度に歯肉から出血していたっけ。

 

 自分の歯にも虫歯やくぼみがあって、そこに食べ物が良く詰まっては、いつまでも咀嚼しきれないといった感じで、よく噛んでいた。

 

 歯磨きの時も、父の口の中は食物残渣物で一杯で、噛み砕き切れなかった残渣物が歯磨き後の嗽の時、沢山流れ出ていたな。

 

 洗面所の排水溝は父の歯磨きの度に掃除しないと、次使う時には水が溜まって流れない程だった。

 

 なので、父の歯磨きと、その後の排水溝の掃除はいつもセットで1日2回やっていたのだ。

 

 ところが、退院したその日、父が噛み砕かなくても、既に細かく切り刻まれている食事は、父が咀嚼しようがしまいが関係なく、飲み込みのタイミングでスムーズに食道に流れ込んでいるようだった。

 

 驚いたのは、食事に要する時間が格段に減った事。

 

 これまで噛む為に随分時間をかけていたという事か。

 

 胃ろうを作る前、まだ父がそこそこ自分で食事できていた頃、咀嚼にそんな長時間かかっているという意識はなかった。

 

 胃ろうを増設して、それでも何とか口からの食事を頑張ってた頃、父の咀嚼時間は延長したのだ。

 

 いつまでもいつまでも噛み続け、次の食事を入れる為に口を開いてはくれない。

 

 だから全量摂取してもらう為に食事介助に係る時間は小一時間程だった。

 

 それが完全刻み食にしたことで、劇的に時間短縮された事になる。

 

 食事介助に係る時間はこれまでの半分になった。

 

 今でもとろみをつけたお茶とかみそ汁とかになると、食事とわからず、飲み込めず、いつまでも口の中に含んでいる事もある。

 

 そうなるとまた長くかかる事にはなるが、以前の食事と水分に比べ、今では水分のみなったということだ。

 

 介護が楽になって、感激したのは事実だけど、果たしてこれでいいのか?とも感じる。

 

 完全刻み食ではあっても、その食事を懸命に咀嚼している父を見ていると、やはりもう少し噛み応えのある物を食べさせてあげたいと感じるのだった。

 

 入歯を作り直して上下ともに装着し、普通食へのトライを開始するべきか、それともこのまま入歯なしの完全刻み食を継続するべきか、退院初日から私の悩みの種となった。

 

 まずは幅広く、父に関わる介助者へ、意見を求めてみようと思ったのだった。