水泡性類天疱瘡の治療薬が順調に減量が進み、新しい水泡形成もなく、水泡が潰れた痕も新しい綺麗な皮膚形成が見られ始めた頃、そろそろ退院を考える時期になった。

 

 入院当初、1カ月程度と予定していたが、既に2カ月を経過していた。

 

 2カ月間、父の居ない生活を満喫した私は、再びあの介護生活が戻ってくることに覚悟を決めながら、退院へ向けて様々な調整を行う事にした。

 

 最も気がかりだったのは、入院時に予定されていたコロナワクチン4回目の接種の事。

 

 水泡性類天疱瘡の治療中に実施する事に懸念を示した主治医は、慎重に、皮膚科専門医の意見を聞いてからと、未だ摂取されていないのであった。

 

 確かに、コロナワクチンは父にどんな影響を及ぼすかわからない。

 

 以前、父の覚醒状態が悪くなり、食事が出来なくなった時も、結局はコロナワクチンの副作用だったのでは?という見方が有力だった。

 

 今は難病、水泡性類天疱瘡の治療中である。

 

 コロナワクチンの4回目摂取に主治医が慎重になるのも当然というものだ。

 

 皮膚科専門員は、父の治療が順調に経過しているので、治療薬の減量を更に進め、暫く様子を看て、問題なければワクチン接種を実施し、更に様子を看て、何事もなければ退院できるだろうと話した。

 

 入院中の病院から連絡がある度に、私は一瞬ドキッとする。

 

 連絡がないのは順調に経過している証拠。

 

 連絡がある時は、何か問題が生じた時。

 

 いつも大抵そうである。

 

 先日も退院の連絡かと思いきや、病院からの連絡は、右上に1本残っていた歯が抜けたようだが見当たらない。飲み込んだようだという報告。

 

 それでは入れ歯が装着できないのでは?と聞くと、食事開始の時から、入れ歯の装着なしで、軟飯刻み食で対応しているとの事。

 

 そうでしたか!

 

 食事をしていると聞いて安心していたが、入歯なしで、軟飯刻み食だったとは。

 

 父自体の介護に多大なる手間がかかる事を思えば、贅沢を言ってはいけない。

 

 だって、あの父に面倒な水泡処置まで加わり、そんな中、胃瘻に頼らず毎日3回の食事を摂らせてくれたのだから。

 

 でも、入歯を装着しない事、普通食を咀嚼して食べなくなる事の悪影響は必ずある。

 

 長らく装着しなかった入れ歯は、もう既に合わなくなっている可能性もある。

 

 それ以前に、右上に唯一残っていた1本の歯が抜けたとなると、父の部分入歯は装着できないはず。

 

 これをどうするか。

 

 入歯を作り直して、普通食に戻すか、現行のまま軟飯刻み食で進めるか、その判断は、父を介護してみなければわからない。

 

 3カ月近くになってしまった入院で、父がまた普通食に戻れるかもわからない。

 

 でも、口から食事するという機能を維持してくれた今回の入院。

 

 私はそれだけで大いに感謝している。

 

 父の食事形態をどうするか、それは私の役割だろう。

 

 退院後の父の様子を看ながら、歯科医師とも相談して、今後の対処を考えようと思う。

 

 さあ!いよいよ父が退院します!

 私の介護生活、復活です!