父に水泡が出来始めたのが8月上旬。

 

 間もなくやってくるお盆に備えて、父は普段より長目のショートステイを利用する事になっていた。

 

 ショートの途中で抜けての皮膚科受診となっていたが、取りあえずの処置として、水泡が破れたら消毒して軟膏塗布というのが皮膚科の指示だった。

 

 処方された消毒剤等をショートに渡して、予定通りのショート利用が出来るよう、私はただ願うしかなかった。

 

 というのもこの頃、新型コロナウィルスの感染急拡大で、あちらこちらの事業所がクラスターを起こして閉鎖する始末。

 

 利用する予定だったショートが利用できないという利用者様も続出していたのである。

 

 幸い父は無事にショート利用には漕ぎ着けて、後は感染者が出ませんようにと祈るのみ。

 

 ショートからどんな連絡が来るのかと、内心ハラハラしていたが、利用中感染者が発生する事はなく、父は穏やかに毎日三食経口摂取しているとの事であった。

 

 しかし水泡の方はというと、やはり次々と出現し、破れては処置が必要になり、そしてまた別の所にできるという状況。

 

 ショートから相談の連絡が入ったが、その時既にお盆真っ只中。

 

 私にも外せないお盆行事があったし、病院もお休み。

 

 ここは堪えて欲しいと依頼するより他なく、そして予定通りのショート利用を終えて、父を迎えたのである。

 

 電話で聞いてはいたものの、やはり、百聞は一見に如かずとはこの事。

 

 父の様子は医療的処置が急増しており、とても在宅で対応しきれるものではないと感じた。

 

 特に、一本しかない足の裏に大きな水泡が二つも出来ており、以前の様に立位時の協力動作が父から得られない。

 

 これは参ったな…

 

 取りあえず自宅へ帰る途中、処置に必要になる物を買い込んだ。

 

 浮腫んでいる父の手に、ガーゼを当てても、テープで貼る事は、剥ぐ時に皮膚を傷つけるので適さない。

 

 ショートではネット包帯を利用していたが、浮腫んでいる父の手が締め付けられ、これも適切とは言い難い。

 

 なので私は、包帯を沢山買い込んだのである。

 

 自宅に帰り、まず父に対して処置から始まる。

 

 あちらこちらにある水泡を確認し、皮膚の状態を観察し、スマホで調べれば大体の皮膚科疾患は理解できる。

 

 とにかく、一日も早く父に医療を受けさせなければならない状況だと感じた。

 

 水泡の数は急速に増え、手足のみで収まらず、体幹にも出始めていた。

 

 手遅れにならないように医療をと考える中で、迷ったことは誰に診てもらう?という事。

 

 個人的には訪問診療の主治医が信頼できると感じるが、皮膚科は専門ではない。

 

 先日受診した皮膚科では父のような重度認知症の患者に適した処方が出来るのか不安だった。

 

 父の処置量や全身管理の必要性から言って、入院が適切と感じるが、それならどこに?

 

 そして入院すれば、折角三食経口摂取出来ているのに、恐らくまた胃瘻になるだろう。

 

 果てさて、一体どうするか?

 

 そんなことを考えながら、父との一夜を過ごしたのだった。