父が入院した日、仕事を終え、自宅に単身戻った私を見て、娘達は開口一番、
おじいちゃんは?
入院したよ。
と答えると、
やったあ!マジで?テレビ見れる♪
とお喜び。
そんなに長い入院ではないと思うよと言ったけど、それでも父が居ない僅かな期間も、本来あるべき自分達の生活を満喫したいみたいだった。
どんなに介護が大変な人でも、華桔梗と同居家族の努力があれば、必ず皆在宅生活が継続できる。
それでも施設入居の選択をする人が後を絶たないのは、子供に迷惑を掛けたくないという本人の意向や、介護は不慣れで大変だからという家族の意向からの事だろう。
でもしかし、選んだ施設が悪ければ、とんでもない羽目に這うのも事実。
外からは分からない、内部事情というものがある。
とは言え、毎日介護する大変さも身をもって理解できるから、施設を選ぶ人の気持ちも理解できる。
でもそんな中、最近受けた研修で、利用者負担を増やすという情報がにわかに舞い込んできた。
介護保険始まって当初は、全員が1割負担であったものが、今では2割、3割の人も居て、この2割3割の人を増やす、つまり基準を下げて、自己負担額を増やすというのが、お国の方針のようだ。
そうなると、2割負担、3割負担の人が増え、そういう人は、これまで支払っていた介護料金が、単純に2倍、3倍になるという事だ。
これはなかなかシビアな話。
今、入居している人も、費用負担が苦しくなってくるのでは?
或いは、利用するサービスを減らすという事もあり得る話。
という事は、サ高住を建設しても収支が変わってくるという事だ。
せっかく、華桔梗が夢見てきた土地が見つかり、計画を立案し検討しようとしている矢先にこれだ。
しかも、今は建築費が急上昇していて、鉄筋、鉄骨のみでなく、木造ですら高値になっているとの事。
なかなか厳しい現状です。
それでも華桔梗が運営するサ高住を心待ちにして下さる方々も実在するのも事実で…
経営者として難しい判断だな…
と考えていたのだが、そんな時、思いもよらぬ情報が舞い込んできた。
父が入院している病院、病棟でコロナ感染者が出たというのだ。
病院は直ぐに全職員、全患者の検査をして、新たに数名の感染者を把握していた。
まさかの事である。
ある意味、私は、病院の中なら安全と思っていた。
父は個室だったし、在宅生活よりは接触者が減ると考えていたので。
しかし、患者の入退院はあるし、病院スタッフにだって家庭がある訳だから、安全な場所なんてある訳ないよね。
父が感染すれば、どうなるんだろうって心配したけど、幸い父は現時点で陰性。
今後の感染拡大次第では入院が長引くのか?と考えていたが、そんな時だった。
父が入院している病院の今の主治医から、私のお携帯に連絡が来たのは。
つづく