振戦はあっても、毎日穏やかに過ごす父を見て、貼付剤を連日貼り続けるなら、内服への変更を考えるべきだと話していた主治医の言葉を思い出す。

 

 確かに、毎日24時間貼り続けるなら、同様の成分内容の内服に切り替えるべきなのかもしれない。

 

 父は寒がりで乾燥肌だし、貼付剤を貼り続ける事で皮膚トラブルの原因にもなり得る訳だから。

 

 それに、先日は自分の手で身体の痒いところを掻いていた父が、貼付剤に気が付き、自ら剥いでしまったことがあるし、就寝時には貼られていた薬剤が、起床時には剥がれて、ベッド内に落ちている事もあった。

 

 万が一、父が認知症故に、その剥がれた貼付財を口に含んでしまったら・・・そう考えると、貼付財を貼る位置にも気を使う必要があり、それでも異物誤嚥の危険は付いて回るという事になる。

 

 だからこそ、次の訪問診療では内服への変更を依頼しようかと考えていたのだが、そんな頃になって、父は傾眠が強くなり始めたのである。

 

 強い傾眠と言っても、立位協力が得られない訳ではないが、食事時の閉眼が継続的になり、食事が途中で止まるようになり、呼びかけても口を開かず眠りかけるようになった。

 

 この状態で無理にでも食事を進ませれば、また誤嚥性肺炎を起こしてしまう。

 

 介助者が常に私であれば、無理に食べさせることはせず、胃瘻への切り替えも適切に判断するが、父を他へ預けている間はどうなるのか。

 

 常時看護師がいる訳ではない施設だと、何とか食べさせようと無理強いするかも知れない。

 

 その結果どうなるかと言えば、誤嚥性肺炎発症での入院。

 

 そしてまた認知機能の低下。

 

 出来ていた事が出来なくなって帰ってくる。

 

 

 例え入院という形でも、父を他へ預けられるとしら、それは本当に私の毎日は楽になる。

 

 そう思えば、父を施設に入れるという選択も考えない訳ではない。

 

 しかし、その結果どうなるか。

 

 答えは簡単。

 

 父は早期に父ではなくなっていただろう。

 

 脳出血を起こしてから様々な治療とリハビリを受け、退院し、父との介護生活を続けて丸3年。

 

 父が今、この状態で父としていられるのは、私が常に傍で父を介護し、私の意向に沿って協力してくれた介護提供者達が居たからである。

 

 受け入れ拒否された事業所もあったけど、受け入れてくれる事業所もあった。

 

 在宅介護には本人や家族の意向に沿った介護提供者の存在が必要不可欠なのである。

 

 ありがたい事に、父にも私にも、今はそういう存在がいる。

 

 であるならば、父はこれからも在宅介護で頑張っていけるだけの可能性があり、その為には、誤嚥性肺炎を起こして入院する訳にはいかないのである。

 

 それならいったいどうするのか。

 

 それはまた次回にお話しさせて頂きます。