在宅生活の継続で、父は頗る覚醒が良い状態が日常となっていった。

 

 毎日3度の食事もほぼ100%全量摂取。

 

 食後の内服薬も経口から毎回上手く内服させることが出来るようになった。

 

 胃瘻を使わずしても、一日に必要な水分量を経口から摂取出来るし、退院後数日のような大変さは、今は無い状態が続いている。

 

 しかし、父の場合は、覚醒が良くなることで良い事ばかりでも無くて・・・

 

 例えば痒み。

 

 元々頑固な乾燥肌で、その上寒がり。

 

 暖房すれば乾燥は強くなるし、覚醒が良ければ、痒い時にかきたいだけかくことが出来る。

 

 かけば皮膚トラブルとなるし、それが更に痒みを増す悪循環に。

 

 また更に、覚醒が良い事で大声が出る。

 

 声の大きさの加減も出来ず、感情コントロールも出来ない父なので、寒い、痛い、痒いで大きな声が出る。

 

 自宅で一人過ごすなら、大きな声が出ても困窮しないが、サービスを利用するとなるとそうもいかない。

 

 父ほど重度でなくても、認知症の人は他にもたくさん利用されているし、認知症でなくても大きな声というのは騒音で迷惑だ。

 

 特に、認知症同士だと共鳴し合うかのように、互いの声が呼び水となって、大きな声の大合唱になってしまう事も。

 

 静かにして欲しいと懇願したところで、父に理解できるはずもなく、何とかこの大声に関しても上手くコントロールできないものかと、試行錯誤暗中模索。

 

 とりあえずの方法として、以前病院から同じような場合の対処法として処方されていた貼付財を試しに使用してみることに。

 

 貼った直後から静かになる事もあれば、貼って暫くしても全く効果が見られない事もあって、お世辞にも薬剤効果が見られているとは言えない状況だった。

 

 痒くても、かきたいところを自由にかけないという事も、イライラして声の原因にもなるし、痒みを取る事の方がやはり先決であることは言うまでもない。

 

 訪問診療の主治医と相談し、結局現在飲んでいる痒みを抑える薬をより強力なものに変更する事にしたのだった。

 

 痒みを抑える効果も強力なら、当然副作用として現れる傾眠効果も強く出るとの事。

 

 痒みを抑えて、傾眠が強くなり、声が抑制されて、皮膚トラブルが改善する。

 

 これが求める筋書きだけれど、果たして上手くいくものかどうか。

 

 やってみないとわからない。

 

 第一、一番の懸念事項は、経口摂取の食事である。

 

 覚醒が良ければ毎食全量完食できるが、傾眠が強く覚醒が下がると、たちまち食べなくなることも想定される。

 

 今は夜間就寝時の唾液の誤嚥も見られていないが、こちらも再発する心配がある。

 

 となると、手段は当然、変更した皮膚科の薬は、途中でダメなら中止できるよう、一包化はせず、単独で分けておく。

 

 これしかないでしょう。

 

 これまでの生活スタイルは全く変えずに、皮膚科の薬だけを変更。

 

 そうして違いを見比べて、今後どうするかを判断。

 

 何事もやってみないとわからない。

 

 どうか上手くいきますように。