胃瘻のキットがコロナの為に入荷しないというから、仕方なく3年程前に救急搬送された、急性期総合病院を受診し、父は手術適応検査を受けました。

 

 外科的には問題ないけど、口腔内には問題ありそうで、急遽歯科受診が必要になり、当日の受診を求められました。

 

 いえいえ、待って。

 ほらほら、父がそわそわしてる。

 

 車椅子の肘掛けを叩き始め、言葉にならない声も発し始めましたよ。

 

 時は既に12時を回り、父は早く昼食を済ませて、内服薬を飲まさなくてはなりません。

 

 父のこの反応は、空腹の訴えと思われます。

 

 この病院で、父に適した食事を確保するのは至難の業。

 

 昼食後の薬も持参していないし、ごめんなさい、今日は無理ですと言わざるを得ませんでした。

 

 朝早くから病院へ行き、診察の順番が一番であっても、いろいろ検査を回って、検査結果が出てからの診察をまた待って、そうするとこうして午前中が終わってしまう。

 

 これが急性期総合病院の悲しい性よね。

 

 日を改めて、今度は歯科受診。

 

 これがまた大変です。

 

 歯科なので、看護師さんというよりは、歯科衛生士さんなのかもしれないけど、普通に話しかけて、父に協力動作を求めても、ごめんなさい、それでは父には理解できません。

 

 歯科では、父の口腔内をチェックして、抜けそうな歯がないかを確認し、あれば、マウスピースを作成する必要がありました。

 

 手術の時は部分入歯を外すから、この歯科受診でもまずは入れ歯を外さなければなりません。

 

 なのですが、それはなかなか大変でした。

 

 初めて会う重度の認知症患者の部分入歯を外すことは、若い歯科衛生士さんには困難で、普段介護している人の支援が必要不可欠です。

 

 マウスピースの型取りともなれば、ねばねばしたゴムというか、ガムというか、とにかく不快なものを口に含んで、しばらく我慢が必要です。

 

 まあ、当然父は嫌がって、喚いてしまいましたが、お許しください。

 

 認知症、なんせ重度なもんで。

 

 やれやれ、不快感我慢の待機時間がようやく終わって、それをまた口から外すのも大変で。

 

 でもそれ以上に大変なのが、その行為をやった後に、今度は入れ歯を装着させるという行為。

 

 父はまた、口の中に不快なものを入れられると思って、激しく抵抗しまして。

 

 ほぼ無理やり入れたような状態でした。

 

 部分入歯の縁に尖った金具が付いていますから、かなり危険なのですけどね。

 

 何とか、流血なく装着できて、良かったです。

 

 この経緯を見ていた歯科医師も、大変やね、いつもしている施設の人は凄いね、と言っていました。

 

 認知症介護は、医師ならできる、看護師ならできるというものではありません。

 

 認知症と一口に言っても、その疾患、その症状、その人の性格等々、対応には兎角個別性が必要です。

 

 初めて会う専門職より、日々お世話している無資格者。

 

 そういう事も言えるのです。

 

 例え資格がなくっても、日々お世話している家族さん。

 

 それが一番有能な看護師さんとも言えるのです。

 

 家族ってやっぱり大切ですね。