それは週末利用しているショートステイでの出来事。
私はその日、予定通りの時刻に父を迎えに行った。
日曜日の夜7時の事である。
父を連れ帰り、就寝準備をしている時、あり得ない状況を目撃してしまったのである。
父の紙おむつが、不適切に装着されている様を目の当たりにしてしまったのだ。
私はこの時の状況をスマホでカメラに収めている。
画像をアップする事も頭によぎったが、業界人以外の人にはなかなか衝撃が強い映像のようなので、今回、それは控えることにした。
なので、言葉で詳しく状況を説明する事にしよう。
父は日中、リハパンと称される、パンツ形式の紙おむつを着用する。
言わずもがな、両足を通す場所は一つ、足を通す場所は左右それぞれ一つずつである。
私が父をベッドに寝かせて、ズボンを脱がせた時、父は、本来左足だけを通す場所に両足が通されており、オムツ自体の前後左右が大きくずれている状態だった。
父には左足が無い。
無いとは言っても、10㎝程はある訳で、片方の足を通す場所に両方の足を通すという芸当は、父の左足が10㎝程しか無いから出来た話だろう。
本来右足を通す場所は、無情にも父のお尻の方にずれ込んでいた。
いつも同時に装着する尿取りパットはかろうじて正しく装着できていたが、この状態ではもし、尿取りパットから尿が漏れた時や、父が排便をした時等に、排泄物を受けるべき吸収材がなく、衣服にもろに付着する事になる。
衣服だけで留まれば良いが、最悪の場合は車椅子にも・・・
この状況を見た時、私は考えた。
これはどういう状況で起こった事だろうかと。
時間がなくて慌てていたのだろうか?
時間がなく、慌てていたから、装着が出来ていないと言える状況に気が付いていたけど、それを放置した?
慌てていたから、自分の装着ミスに気が付かなかった?
まあ、そう言うのが一番無難な回答。
でもね、後に謝罪に来た施設の方にこの時の写真画像を見せると、一瞬で表情を変え、気付かなかったとは言えない状況だという事を理解したようだった。
私は月曜日の朝を待って、施設に連絡し、今回の事に対して担当者の真意を知りたいと申し出た。
というのも、家族が迎えに来て、この後、発見するとわかっていての行為に疑問が湧いたからである。
つまり自分がオムツの装着をミスった状態で放置したら、この後迎えに来た家族が自宅で発見するという状況は明確な事実なのだから。
もの言えぬ認知症患者を介護する家族としては、このような状況を見せられると、本当にいろいろと不信感が湧いてしまう。
例えば、帰宅前にこのような状況という事は、連泊の時にはもしやもっと雑な扱いをされているのだろうか?とか、家族が見るとわかっていてこの仕打ちという事は、担当した介護職員が、介護が大変だからもう利用するなと言いたいのだろうか?とかね。
その介護職員の真意は結局誰にもわからない。
施設側の話では、気付かなかったとの事らしいが、口では何とでも言えるもの。
だけど、状況だけで判断するなら、これは虐待です。
高齢者の尊厳を無視した虐待に他ならない。
排泄がトイレでしたくても、尿意も便意も失ってしまえば、タイミングよくトイレに行く事が出来ない。
歩けないとなれば、トイレに行く事すらできない。
ひどい扱いをされても、ひどい扱いをされたという事を、言葉で伝える事も出来ない。
記憶にも残らない。
オムツがきちんと履けていない事を、履けれてないよと伝える事も出来ない。
それが重度の認知症患者というものだ。
しかし、その患者にも人権がある。
守らなければならない尊厳がある。
高齢者の尊厳を守る。
口で言うのは簡単。でも守られていないのが現状。
だけどね、介護の世界では、非常に身近に存在する事。
難しく考える必要はない。
どんな介護が、どれだけの介護が必要な人であっても、可能な限り健常者の様に生活する事が出来るよう支援する事、それが尊厳を守るという事なのだから。