先日、入院後一週間というところで父に面会した。

 

 食事をする広間に車椅子の父を見つけ、声をかけた。

 

 父は私を見て、名前は出てこなかったけど、私が私であるとわかっている様子だった。

 

 良かった。

 

 一度安堵したものの、しかし父の瞳には、自宅に居る時の輝きがない。

 

 やはり少し環境の変化に戸惑っているのかな。

 

 入院から2週間たったところで、主治医からの状態説明があり、そこで父が入院後はこれまで通り口から食事して、ほぼほぼ全量食べることが出来ていると聞いた。

 

 血液検査や脳のCT検査などを経て、主治医は入院前の食べないという父の現象が、もしかしたらコロナワクチンのせいだったかもしれないと語った。

 

 ワクチン接種が抗生剤を内服中という、完全に体調を整えた上での接種ではなかったことも、要因であったのではないかとも話した。

 

 なるほど。

 

 確かに父の食べられないという現象は、コロナワクチン接種翌日の事だ。

 

 そして主治医は飲み込み検査の結果についても説明した。

 

 約1年前と比較して、父はやはり飲み込む時の誤嚥が起こっていた。

 

 造影検査の画像には気管に流れ込む様子がはっきりと映っていた。

 

 けど幸いにも父にはまだ吐き出す力が残っており、気管に流れ込んだ瞬間に勢いよく咳き込んでいるとの事であった。

 

 ならばここからは主治医の見解を聞きながら、今後どうするかを決めていかねばならない。

 

 それが私の役目。

 

 まず、時間は多少かかってはいるが、食べることが出来ている現状で、今すぐ胃瘻が必要という訳ではない。

 

 しかしながら、一年前に比べて誤嚥は起こしているとなれば、それが認知機能の低下によるものなのか、それとも処方によるものなのかを見極める必要がある。

 

 このところ、父が夜間咳き込むことが多いのは、明らかに唾液を誤嚥しているからであり、2回の誤嚥性肺炎もそれが原因だったかもしれない訳だ。

 

 だからこそ、何もしないまま退院することは出来ない。

 

 まずは処方調整を行って頂き、覚醒を抑制する薬を減量しても、誤嚥が減少しないかという事を検証する必要がある。

 

 また更に、今胃瘻造設をしなくても、後に行う事が出来るのかについても主治医に確認しておく必要がある。

 

 いよいよ胃瘻が必要になった時、もう造る事が出来ませんと言われてしまっては悲しいからだ。

 

 今造っておいて、使わないという選択肢もある訳で。

 

 それから胃瘻造設した場合、使用中の対策も必要。

 

 父は重度の認知症故に、胃瘻だろうが何だろうが、不快であれば抜去する。

 

 胃瘻から流動食を流している間、ミトンという抑制帯を使って、父の右腕の動きを抑制するか、あるいは、ずっと見守りながら手をつないでおく等の対策が必要だろう。

 

 家族としては後者を選びたい。

 

 現時点では、取りあえず2回目のコロナワクチン接種を無事終えてから、処方調整をもう一度試みて、それから胃瘻造設についてもう一度考えることにしよう。

 

 もう少し傍に居られる。

 良かったぁ。