結論から伝えよう。

 

 インド変異株による感染拡大が危惧される中、新型コロナウィルスワクチン接種の予約日当日、父は無事ワクチン接種を受けることが出来た。

 

 まずはこれに安堵である。

 

 しかしそれもそのはず、予定通りにワクチンを接種するというミッションを成功させる為に、私は予防的に抗生剤の延長投与を希望していたのである。

 

 前回誤嚥性肺炎による熱発で処方された抗生剤は、一週間分。

 

 飲み終えた時、ワクチン接種までまだ一週間あったし、週末のショートステイも控えていた。

 

 このまま何もしなければ、父がまた発熱してワクチン接種できなくなることは容易に想像できた。

 

 三回目となると入院が免れないかも知れない。

 

 入院患者と外来患者ではワクチンの予約枠が違うらしく、せっかく取った予約が白紙になってしまう。

 

 故に、何としても熱のない状態でワクチン接種の日を迎える必要があった。

 

 主治医も抗生剤を内服中であっても、全身状態が落ち着いておれば、ワクチン接種は可能と判断していたので、私は抗生剤の延長を希望したのである。

 

 結果、当日のワクチン接種担当医は、普通は抗生剤内服中であれば接種はしないものだと話したが、電話で父の主治医と話した後、ワクチン接種に踏み切った。

 

 ワクチン接種を担当した医師には本当に気の毒な事だと思う。

 

 このような状態の父にワクチン接種をするのは正直不安であったに違いない。

 

 15分の待機時間を30分に延長し、そして接種を担当した医師自らも、その30分間、父の近くを漂うように歩き、時折、父の脈を取っていた。

 

 医師という仕事は、その国家資格と、知識と技術だけでは務まらない。

 

 そこには誠実さと多大なる責任が伴うものである。

 

 しかしながら、この世界で仕事していると、嫌でも沢山の非人道的な医師に出会ってしまう。

 

 いったいどれくらいの比率だろうか。

 

 全医師中の本物の医師。

 

 私はこの世界で仕事していて常日頃から思う事がある。

 

 それは常に心が大事という事。

 

 医療や介護において、一生懸命やれば必ず結果が伴うというものではない。

 

 癌によって亡くなる人は後を絶たないし、認知症を完全に治癒させた人もいない。

 

 必ずしも結果が伴う世界ではない以上、どんな事が起こっても、常にその時々で、最善の策を取ったか、真摯に向き合う事が出来たか、誠実な対応が出来たか、それが大事だ。

 

 誠実。

 優しい愛情。

 

 桔梗の花の花言葉である。

 

 失敗から逃げてはならない、言い訳をしない。

 

 どんな人に出会っても、ありのままを受け入れよう、心に愛を!

 

 それが我が華桔梗の合言葉である。

 

 この世界には、嫌、この世界だからこそ、あんまり利益を重視しない馬鹿な企業があってもいい。

 

 スタッフの生活を守る事も私の使命であるから、ボランティアは出来ないけれど、それでも出来るだけの事はして、利用者やその家族が安心して暮らしていけるような支援がしたい。

 

 利用者サイドと事業者サイド。

 

 どちらもわかる私だからこそ出来る事。

 

 今日もその信念を胸にデスクに向かう。

 

 無事にワクチン接種できたというのに、誤嚥性肺炎を抑制し、熱発もしていないというのに、それでも父は入院した。

 

 次回はその事についてお伝えしたい。