父は毎日3食食べる。
朝は8時の朝食、昼は12時の昼食、夜は18時30分の夕食である。
朝食と夕食の後には、認知症状をコントロールする為の重要な内服薬があり、定時の内服が大切なので、いつも食事の時間にも気を付けている。
とは言っても、週末利用するショートでは夕食は18時だし、食事介助をする人によっては食事の所要時間も変わってしまう。
だから寸分違わぬ様にという訳にはいかないのが現実である。
食事の時は、父に、「ご飯食べようか」と声をかけ、手洗い、テーブルへの移動から始まり、お食事エプロンを装着。そして食事を父の前へ運ぶのである。
重要なのは、この時、「はい!お箸!」と言って、父にお箸を持たす事。
処方調節の為、2ヵ月程入院した時、もうお箸を持たせても握るように持ってしまうと言われていた。
お箸でつまんで口まで運ぶことは出来ないと言われていた。
でもしかし、私は諦めなかったのだ。
入院前には出来ていた事。
入院してすぐに誤嚥性肺炎になって、一時食事がストップしていた事、その後食事が再開しても、お箸を使えなくなっていた事、全て聞いていたし理解していた。
それでも私は毎食時、必ず父に箸を持たせた。
握るように持つと聞いていたが、箸を握った父に、「持ち方違うよ」と言いながら、正しく持たせた。
すると、そんなに根気がいる程の事もなく、父はあっさり箸の持ち方を数日で再習得したのである。
それだけではない。
調子が良い時は箸でつまんで口まで運ぶことも数回出来た。
これは、失ってからでも日が浅ければ取り戻すことが出来るという事を私が実感した事例である。
父の場合、毎日こんなふうに調子が良い時ばかりではなく、日によってはコンディション最悪な日もあって、そんな時は、閉眼して天を仰ぐように固まっている。
呼びかけに返事はするけど、持たせた箸も全く動かさない。
眠っているというよりは半覚醒状態というべきか。
そういう時、眠っているからと言って食事を遅らせてはいけないのである。
そんなことをしたら、食事の時間、内服の時間、睡眠の時間、全てがずれ込んでしまう。
そもそも、食事の時間は寝る時間ではないし、寝るなら夜しっかり眠るべきである。
だからただひたすら起こすべし!
まず温かいと気持ちよく眠ってしまうから、少しくらい寒い方が良い。
ひざ掛けは没収です!
そして大きな声で呼びかける。
誤嚥予防の為には、頚椎の伸展位も危険なので、取り上げた膝かけを丸めて、後頭部へ挿入。
鼻の傍に匂いのきつい食事を運んで嗅がせてみたり、温かいお茶などを肌で感じさせたりしながら、食事の時間であることを父に伝える。
そうして食事を唇にあてると、閉眼したままでも口を開けて咀嚼を始めるのである。
言っておくが、勿論お茶などの水分にはとろみをつけて提供している。
食事も大きなものは一口大にしているし、咀嚼と嚥下(飲み込み)のタイミングもよくよく観察して、次の食事を運ぶ際の目安にしている。
本当に世話の焼ける父なのです。笑