父が帰ってくる。

 

 そう覚悟を決めて、私は自宅での父の受け入れ準備にかかった。

 

 まずは段取り。

 

 退院のその日は何時に自宅に戻るか、送迎はどうするか、介護保険のサービス利用は?単位数は?

 

 そうして父の退院に向けて頭の中でイメージしていた矢先、入院先の病院から連絡があり、私は主治医と話さなければならなかった。

 

 話の内容は勿論父の様態について。

 

 退院の日取りが決まったというのに、父は夕刻熱を出し、体温38℃を超えたという。

 

 こんな時期だから瞬間的にまさかと思いました。

 

 そう、コロナ。

 

 地元では変異株での感染拡大が続き、毎日30人程度の感染者が続いていた。

 

 ご近所の高齢者施設での感染者も出ており、ついに来たか、父は死ぬのかと、一瞬の内に脳裏を駆け巡った。

 

 しかし主治医は続けて、

 念の為、新型コロナウィルスの抗原検査をし、陰性でした

 と私に告げた。

 

 良かった!

 

 不意に口をついた。

 

 血液検査等の結果から、尿路感染症だろうという話であったが、気になるのは退院できるのかという事。この時の電話ではとりあえず抗生剤を投与して様子を観て、退院前にもう一度連絡をするという事になった。

 

 尿路感染症。

 

 これまでの自宅介護生活では一度もかかった事がない。

 

 毎日デイサービスに行き、毎日入浴させてもらっておれば、例え毎回オムツ内排尿であっても、衛生管理は完璧と言うところか。

 

 入院中、担当看護師の方が頑張ってくれたとは言え、週に2回の入浴では決して十分とは言えない。まして、忙しい業務の中で、どの程度頻繁に尿取りパットの交換が可能であったろうか。

 

 正規職員の病棟看護師となれば、夜勤もあって当然。毎日担当できる訳もなく、今回の感染は止む終えない事と言えるのだろう。

 

 早く退院させなければ、入院によるデメリットの反撃がやってきそう。

 

 この熱による弊害が大きく影響しない事を願いつつ、予定通りの退院日を願うしかなかった。

 

 幸い、退院を目前にした週末、再び連絡があり、熱は下がり経過良好との話であったが、退院については判断を委ねられてしまった。

 

 望むなら、もう少し経過を観察してからでも良いとも思うとの主治医の話。

 

 そう言われてしまいますと私の心も揺れてしまいます~

 なんせ介護生活大変なんで。

 

 でも、でも、でも!

 

 そんな自分の中の甘えを振り払って、私は主治医に逆質問。

 医師としての判断では、退院が可能か?と問うた。

 

 答えはYES。

 

 なら、予定通り、退院します!

 

 こうして父は退院前の一波乱を終えたのだった。

 

 2カ月強の間、使用者不在だった父のベッドはすっかり埃をかぶり、布団やシーツも全て剥して、丸洗いが必要。

 

 外を見れば週末のこの日、朝からとても良い天気。

 

 父上、お布団、干しておきました!

 シーツも部屋も綺麗にしました!

 

 まだまだ寒かった入院時だったけど、季節はすっかり春。

 

 衣類の入れ替えもして、退院時の普段着も用意完璧。

 

 後は当日晴れますように!

 

 おっと、忘れてた!

 必要なオムツの種類も買い揃えておきますね♪