写真展に行ってその瞬間を見たい。 | huit bonheur-羽生結弦選手-

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ソチからの平昌までを残したくて始めたブログです。

スポーツ写真家・高須力が描く

『フィギュアスケート写真』

の世界(前編)


―フィギュア人気で競技会には毎回たくさんのカメラマンがいますが、高須さんの撮る選手はちょっと他とは違う印象があります。 

高須  いつも他のカメラマンとは違う瞬間を狙うように心がけています。例えばビールマンスピン(片脚を後方から頭上に伸ばし、その脚を手で保持した状態で行なうスピン)だと、ブレードをしっかりつかんでいるところを撮る人が多いですが、ぼくはちょっと手が離れた瞬間を狙ったりしています。

ちょっと手が離れた瞬間👏

――Numberの表紙になった『オペラ座の怪人』も仮面を顔に着ける“ちょっと前”です。 

高須 あれも、怪人(羽生)がしっかり顔を隠している写真が一般的ですが、ぼくは顔から手が少し離れたところ、顔が半分見えているところを意識しました。性格が捻くれているのか、人と同じ写真が好きじゃないんです。 

顔から手が少し離れたところ
顔が半分見えているところを意識しました。👏

――やはりNumberですが、昨シーズンのフリー『Hope & Legacy』の写真も、すごく綺麗ですね。 

高須 本当のことをいうと、違う瞬間を狙っていました。練習でやっていたちょっとした仕草なんですが、本番にはありませんでした。直前で少し乱れたので抜けちゃったのかも知れませんね。撮影ポジションも最終グループの直前までいろいろ考えて、審査員席の反対側に陣取りました。 

本当は違う瞬間を狙っていた
練習ではやっていたので、本番ではそのところがなくて…乱れたからか。
撮影ポジション最終Gまでかんがえてジャッジ側に。

昨シーズンのフリーは、ショートの『Let's go crazy』とは対象的に繊細な表現が多いので、写真で表現するのがすごく難しいプログラムでした。昨シーズンはすべての試合を撮影しましたが、写真的には惨敗続きだったので、すごく苦労させられましたね。

――前もって動画などでプログラムの構成を研究するのでしょうか? 

高須 見ますよ。もちろん生で練習も見ますし、新しいプログラムは、ここで飛ぶとか、ここで何をするとかチェックします。例えば羽生選手の場合だと“見せ場”があるじゃないですか。それをリンクのどの位置でやるのかは、前もっておさえておきます。どの角度で撮るのがこの技は一番綺麗に見えるのか、とか。

“見せ場”リンクのどの位置前もっておさえる。
どの角度で撮るのがこの技は一番綺麗に見えるのか。

――撮影ポジションは、日本と海外では違うと聞きましたが。 

高須 日本だと決められた場所でしか撮れません。海外だと空いていれば客席で撮ってもかまわない国も多いです。だから、年間の撮影スケジュールを考えて、日本で撮れるポジションは外して、違うアングルを優先するようにしています。一年かけてひとつのプログラムを表現する感覚です。

このお話はカメラマンが話ますよね。
1年かけて完成させると。

羽生結弦は

羽生結弦という役になり切る


――羽生選手の苦悩はどうでしょう。 

高須 どうなんでしょうね。彼はそれすら楽しんでいる気がします。羽生選手の場合は、自分で自分をコントロールしているイメージがあります。自分自身にあそこまで入り込める人って、そういないですよね。映画の役者さんが撮影が始まるとその人になり切っちゃう、そんな感じです。 

ON🔛OFFなのでしょうね。

――興味深いですね。確かにどこまでが素なのかわからない印象はあります。 

高須 先輩カメラマンで野球のイチロー選手を撮っている人がいるのですが、「イチローよりも自分に入り込める人って見たことがない」って言うんです。イチローよりも入り込めるっていう部分で、羽生選手は相当凄いかもしれないって。 

アスリートって色々あって、例えばサッカーの本田圭祐選手だったら、自分で言って自分を追い込む。そういう人もいるし、モチベーションの持っていき方は人それぞれだと思うんです。羽生選手やイチロー選手は、“自分になりきる”というか。

自分になりきる

――役者さんを撮影する感覚になりますね。 

高須 写真を撮る方としては、そういうタイプのアスリートを撮るのはすごく楽なんです。いい表情を作ってくれますから、黙っていてもいい写真が撮れる、むしろ撮らされてしまう。それだと面白くないので、本人の想像以上の瞬間を撮ってやろうって変な燃え方をしてます。

そういうタイプは撮りやすい。
黙っていてもいい写真が撮れる。

むしろ、撮らされている←ここ大事!

それだとおもしろくないので

本人の想像以上の瞬間を
撮ってやろうって変な燃え方をする

私も絶対にこのタイプですw