女という輪廻の中に生きている、ということを実感した一冊。
角田光代さんの「口紅のとき」。
6歳から79歳まで、様々な年齢の女性の、口紅にまつわる短編集。
一編一編に共感して、未来の自分を重ねて描いて、少し泣いてしまった。




はじめて真っ赤な口紅を塗った時は、
なぜだか悪い事をしてるみたいでどきどきした。
わたしが口紅を塗っている姿を見て、
友達が「女になる瞬間だね」と言ってくれた。
二十歳の誕生日にお世話になっている人から頂いた口紅は、
人生ではじめて使い切った口紅になった。
東京に生きるただの21歳のわたしの支えである歌手のライブに行く時は、
いつだって余所行きで使うシャネルのリップを塗っていた。
特別な日にだけ使おうと決めた口紅を、
なんでもない日につけることをささやかな復讐にしたりもした。
一番最初に買った口紅がなんだったかは、もう忘れてしまった。




これから先何本の口紅を塗るのだろう。
わたしは本当に口紅が好きだから、きっとおびただしい数になるだろうな。
社会的マナーとかそういうもののためではなくて、
わたしのために、誰かのために、誰かの目に映るわたしのために塗る口紅。
それにはきっとドラマがある。




明日は何の口紅を使おうか。
好きな女の子に逢う予定と、好きな歌を歌う予定がある。
鮮やかな日々を、鮮やかな口紅とともに過ごしたい。