松岡まどか、起業します

AIスタートアップ戦記

安野貴博 早川書房 2024年7月



 

 

日本有数の大企業・リクディード社のインターン生だった女子大生の松岡まどかはある日突然、内定の取り消しを言い渡される。さらに邪悪な起業スカウトに騙されて、1年以内に時価総額10億円の会社をスタートアップで作れなければ、自身が多額の借金を背負うことに。万策尽きたかに思われたが、リクディード社で彼女の教育役だった三戸部歩が松岡へ協力を申し出る。実は松岡にはAI技術の稀有な才能があり、三戸部はその才覚が業界を変革することに賭けたのだった――たったふたりから幕を開ける、AIスタートアップお仕事小説!





内定取り消しを言い渡された松岡まどかが、

どんな内容の会社にするのかの展望もないまま、起業するなんて、なんて無謀なと思った。


しかし、やり手の三戸部歩の協力を得て、なんとか会社を立ち上げる。



自分の得意なことは何なのか?何をしたいのかを真剣に考える。



順風満帆とはいかない経営、さまざまな問題が持ち上がる。その時、どんな決断をするのか?

いったいどうなっていくのかと、ハラハラしながら読んだ。


今の時代にあったお仕事小説。

とても面白かった。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


ブラザーズ ・ブラジャー

佐原ひかり 河出書房新社 2021年6月



 

 


父の再婚で新しい母・瞳子さんと弟・晴彦と暮らすことになった、高校一年生のちぐさ。
ある日、晴彦がブラジャーを着けているところに遭遇する。
「ファッション! ふつうにおしゃれでやってるんだよ! 」
「うそ! いったいブラのどこがおしゃれだっていうのよ」
「どこって……。デザインとか、形とか、おしゃれじゃん……。刺繍だって、すげえし……」
戸惑いながらも晴彦を「理解」しようとするちぐさだったが、ある言葉で傷つけてしまい――。

弟とか、男の子とか、関係ない。ただ目の前の「あなた」に向き合いたい!
ちぐさは意を決して――! ?





の再婚で新しい母・瞳子さんと中学生の弟・晴彦と暮らすことになった、高校一年生のちぐさ。

ブラジャーが好きだという晴彦に戸惑いながらも理解したように振る舞う。

しかし、ある時、傷つけてしまう。


新しい家族の話の他に

恋人 との関係、守られていることがうれしい反面、強い側の彼の立場の言葉がこわい時がある。

友だちとの関係、本心を言わず、飲み込んでいる。

傷つけないから、傷つけないでと祈る。

そんなちぐさの感情が細やかに描かれていた。


私も晴彦も、お互い信じられないことだらけだ。これから幾度となく、わけわかんない、と目を向き合うに違いない。でもわかろうがわかるまいが、ただ、それらを知っていくだけなんだと思う。そんな予感に、すこし痺れた。〉



ちぐさと晴彦、新しい関係が作れそうな予感!


好きなことを貫こうとする晴彦は強い子だと思った。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


シルバー保育園サンバ!

中澤日菜子 小学館 22024年10月



 



銀治は、定年退職後に妻から離婚を言い渡され、孤独で怠惰な日々を送っていた。暇を持て余し、シルバー人材センターからの様々な仕事を担っている。ある時、保育園の草むしりの仕事が入り、担当することに。銀治は、人と接すること、特に女性と子どもは大の苦手。渋々保育園に向かうが、次々に巻き起こるハプニングに対応し、その活躍が認められた銀治は、熱烈なリクエストによりそのまま嘱託職員となるはめに。
当初は銀治を怖がっていた子どもたちもだんだん慣れてなつくようになり、人付き合いが苦手な銀治も徐々に保育士たちとも打ち解けていく。日々、子どもや周囲の人たちと接するなかで、孤独だった銀治の心には少しずつ変化が。そんなある日、定年退職後に離婚し離れて暮らす娘について、衝撃の事実を知る――。そして銀治は、自分自身が蔑ろにしてきた「本当に大切なこと」に向き合うようになっていく。長い間蓋をしていた感情が蘇り、前向きに変わっていく銀治。勇気を振り絞って行動することや、あきらめないことの大切さ、いくつになっても後悔は取り戻せるということ・・・・・・。人生に大切なたくさんのことを笑いと共に教えてくれる、人生応援小説。






仕事を理由に家事育児は妻に任せっきりだった銀治。定年退職後、離婚してひとり暮らし。
シルバーセンターから依頼を受けた仕事をしていた。
ある時、保育園の草むしりの仕事をきっかけに保育園の嘱託職員になることに~


女性子どもと接するのが苦手。家事育児をしたことがない銀治の保育園での奮闘記。
笑える場面が多かったけど、子どもたちや保育士と接していくなかで銀治が変わっていくところがよい。

障害のある子は、普通の保育園で健常児と過ごすのがいいのか、療育園でその子にあった保育を受けるのがいいのか?
簡単に答えがでないと思った。

卒園式は感動!

家族とも真剣に向き合うようになった銀治。
悲しい出来事だけど、少しはわかりあえてよかった。


気に入り度⭐⭐⭐⭐




最後の鑑定人

岩井圭也 KADOKAWA 2022年7月



 

 



「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です」
「最後の鑑定人」と呼ばれ、科捜研のエースとして「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」と言わしめた男・土門誠。ある事件をきっかけに科捜研を辞めた土門は、民間の鑑定所を開設する。無駄を嫌い、余計な話は一切しないという奇人ながら、その群を抜いた能力により持ち込まれる不可解な事件を科学の力で解決していく。孤高の鑑定人・土門誠の事件簿。
『永遠についての証明』『水よ踊れ』で業界の注目を集める新鋭が正面から挑む、サイエンス×ミステリ!





気難しいが腕は一流という鑑定人の土門誠。

土門鑑定所に持ちこまれた事件を解決していく。


殺人事件の犯人として元交際相手が逮捕される。遺体に残されたDNAが合致したが…

一軒屋の火事。そこに住む技能実習生の一人が火をつけたと消防に連絡。しかし逮捕されてからは黙秘を続ける…

海底に沈んでいる車の中で白骨化した遺体が発見される。宝飾品があったことから、質屋を営んでいた夫婦殺害の犯人と思われるが…

娘の遺品を見てもらいたいという依頼が…
土門が警視庁の科捜研をやめる ことになったのか、その事実が明らかになる。


いろいろな鑑定の仕方で、真実に 向かっていくのがおもしろい。
土門が鑑定という仕事に誇りを持って向き合っている姿がよかった。

弁護士、判事、警視庁、科警研と土門の関わり方も興味深い。

技官の高倉は仕事ができるし魅力的な女性で、いい味だしてた。





お気に入り度⭐⭐⭐

それは令和のことでした、

歌野晶午 祥伝社 2024年4月



 

 

著者の企みに舌を巻く!哀しみと可笑しみの令和ミステリー 小学生のときは女男と指をさされ、母親からはあなたの代わりは誰にもつとまらない、胸を張れと言われる。平穏を求めて入学資格に性別条項のない私立の中高一貫校に入るが、いじめはさらにエスカレートし、みじめな姿がSNSで世界中にさらされていく。それは僕の名前が太郎だから――(「彼の名は」)




なぜ、太郎という名前でいじめられるのか、不思議だったけど……

そういうことなのね。



いじめ、SNSの〈いいね〉、ジェンダーの垣根のない社会、善意でしたことが強制わいせつ罪となってしまう、大人のひきこもり、自分の足で歩くスマホのゲーム、認知症、毒親、炊き出し、不法滞在、藤井聡太で注目されている将棋、不登校、ビデオ通話……

これらは、確かに令和のできことだ。



短編一つ一つが魅力的な話で、最後にオチがあり、驚かされることばかり。
前にもだまされたことのあるトリックだと思うものもあったが、今回もまんまとだまされた。

気に入り度⭐⭐⭐⭐




滅茶苦茶

染井為人 講談社 2023年5月



 

 


仕事は順調、東京でシングルライフを謳歌する30代女性が始めた不穏な恋愛。下校中、不良に堕ちた元級友に再会した、とある北関東の高校生。老朽化したラブホテルを継ぐが経営不振に陥った静岡県在住の中年男。
刹那な現代をサバイブしながらも、孤独を胸底に抱える者たちの欲望に駆られた出会いは、彼らをまっさかさまに谷底に突き落とす。





黒い糸」がおもしろかったので、染井為人さんの他の作品を読んでみることに~

コロナウイルスに 感染したわけではないが、コロナ禍の影響を受けた3人の物語。


マッチングアプリで知り合った男性にのめり込んでいく30代の独身女性。

昔の不良の同級生と再会。夜、出歩くようになった高校生。

ラブホテルの経営には、持続化給付金は給付できないと言われ、不正受給に手を染めた経営者。

坂を転がるように、どこまでも落ちていく。
いったいどこに着地するのか?

この3人は、ニアミスすることなく、 ある事故で出会う。
その怒濤の展開に興奮!
すごいわ。

気に入り度⭐⭐⭐⭐


黒い糸

染井為人 角川書店 2023年8月



 

 

千葉県松戸市の結婚相談所でアドバイザーとして働くシングルマザーの平山亜紀は、仕事で顧客とトラブルを起こして以降、無言電話などの嫌がらせに苦しめられている。
亜紀の息子・小太郎が通う旭ヶ丘小学校の6年2組でも、クラスメイトの女児が失踪するという事件が起きていた。
事件後に休職してしまった担任に替わり、小太郎のクラスの担任を引き継いだ長谷川祐介は、クラス委員長の倉持莉世から、クラスの転入生の母親が犯人だという推理を聞かされて戸惑うが、今度はその莉世が何者かに襲われ意識不明の重体となってしまう。
特定のクラスの周辺で立て続けにおきる事件の犯人は同一なのか、またその目的とは。





結婚相談所で働くシングルマザーの平山亜紀の話と

旭ヶ丘小学校の6年2組の女児の失踪の話が

交互に描かれるが、亜紀の息子の小太郎が旭ヶ丘小学校の6年2組であることから話はつながる。


結婚相談所の会員の苦情。

失踪した女児の両親の学校への苦情。

どちらも過剰で耐えられないなあと思う。

ノイローゼになりそう!!



亜紀の後輩社員、謙臣が親切で亜紀の力になっているのが亜紀にとっては救いになっている。


倉持莉世は宗教団体の娘ということで、その境遇には驚いたが、彼女はしっかりしている。

事件に関する考え方は飛躍しすぎだけど。



クラス担任を任された長谷川祐介は、生徒にも寄り添っていい先生だ。



普段はおとなしいのに、癇癪を起こす小太郎は、父の遺伝なのか?



祐介の兄の風介って、変人でうっとうしいヤツだけど、彼の論説が正しかったってこと!?


驚きの展開だった。


気に入り度⭐⭐⭐⭐





残照の頂 続・山女日記

湊かなえ 幻冬舎 2021年11月



 

 

通過したつらい日々は、つらかったと認めればいい。たいへんだったと口に出せばいい。そこを乗り越えた自分を素直にねぎらえばいい。そこから、次の目的地を探せばいい。」
後立山連峰
亡き夫に対して後悔を抱く女性と、人生の選択に迷いが生じる会社員。
北アルプス表銀座
失踪した仲間と、ともに登る仲間への、特別な思いを胸に秘める音大生。
立山・剱岳
娘の夢を応援できない母親と、母を説得したい山岳部の女子大生。
武奈ヶ岳・安達太良山
コロナ禍、三〇年ぶりの登山をかつての山仲間と報告し合う女性たち。
……日々の思いを噛み締めながら、一歩一歩、山を登る女たち。頂から見える景色は、過去の自分を肯定し、未来へ導いてくれる。




くなった夫の想いを胸に山登りする女性。

彼女につきあい一緒に登った女性は、昔の恋人と再会する。


相手に伝えられないおもを胸に秘め登山する音大生。


娘の山のガイドの仕事を認められない母親。


かつて山仲間だった女友だちとコロナ禍に語りあう。


それぞれの人生を山に登って考える。

一歩一歩踏みしめて登ることが、頂きで見る景色が、前向きな気持ちにしてくれる。



私は本格的な山登りはしないけど、

五郎岳に行くまでの小遠見山、立山の雄山は登ったことがある。

山はいい!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



鳥と港

佐原ひかり 小学館 2024年5月



 

 

大学院を卒業後、新卒で入社した会社を春指みなとは九ヶ月で辞めた。所属していた総務二課は、社員の意識向上と企業風土の改善を標榜していたが、朝礼で発表された社員の「気づき」を文字に起こし、社員の意識調査のアンケートを「正の字」で集計するという日々の仕事は、不要で無意味に感じられた。部署の飲み会、上司への気遣い、上辺だけの人間関係──あらゆることに限界が来たとき、職場のトイレから出られなくなったのだ。
退職からひと月経っても次の仕事を探せないでいる中、みなとは立ち寄った公園の草むらに埋もれた郵便箱を見つける。中には、手紙が一通入っていた。
「この手紙を手に取った人へ」──その手紙に返事を書いたことがきっかけで、みなとと高校2年生の森本飛鳥の「郵便箱」を介した文通が始まった。
無職のみなとと不登校の飛鳥。それぞれの事情を話しながら「文通」を「仕事」にすることを考えついたふたりは、クラウドファンディングに挑戦する。



偶然の出会いから始まった文通、こういう話、わくわくする。


メールやラインなどで連絡をとる 時代だけれど、便箋、インク、封筒、切手をその時に応じて選ぶ手紙で文通するのもいいものだなと感じた、


みなとと飛鳥はクラウドファンディングで文通屋を始める。


どうなっていくのかとわくわくした。

でも、結局、飛鳥の親の力を使って宣伝したのが残念な気持ちだが…。



ふたりとも、頭脳は明晰で、感受性も強い。

だから、感情豊かな手紙を書けたのだろう。


しかし、忙しさに紛れて源さんに手紙を送りそびれたこと、このエピソードは、悲しかった。





みなとは、今まで、お金の心配もなく、恵まれた環境で、できる人として扱われ、それにこたえてきたからこそ、会社でうまくいかなかったことがショックだったのだろう。


飛鳥は、もっと恵まれた環境。


このよう環境だからこそできたことと言ってしまっては身も蓋もない。



ふたりは自分の育った環境についても、自分は恵まれていると気づいた。この経験がいろいろな気づきになったのだ。


要は、ふたりが出会い、お互いを大切に思う存在になったことが大切なのだと思った。


仕事とはなになのか?

ふたりは試行錯誤を繰り返しながら、将来を考えていくように思った。



気に入り度⭐⭐⭐⭐





冬に子供が生まれる

 佐藤正午 小学館 2024年2月



 

 

その年の七月、丸田君はスマホに奇妙なメッセージを受け取った。
現実に起こりうるはずのない言い掛かりのような予言で、彼にはまったく身におぼえがなかった。送信者名は不明、090から始まる電話番号だけが表示されている。
彼が目にしたのはこんな一文だった。

今年の冬、彼女はおまえの子供を産む


これは未来の予言。
起こりうるはずのない未来の予言。
だがこれは、まったく身におぼえのない予言とは言い切れないかもしれない。
これまで三十八年の人生の、どの時代かの場面に、「彼女」と呼ぶにふさわしい人物がいるのかもしれない。
そもそも、だれが何の目的でこの予言めいたメッセージを送ってきたのか。
丸田君は、過去の記憶の断片がむこうから迫ってくるのを感じていた──。






マルユウとマルセイの区別がつかず、話の内容が、なかなか頭に入ってこなかつた。


小学生の頃、何があったのか?

その10年後、事故で何がおきたのか?


それは読んでいくうちにわかってくるのだが、SFのような信じられない内容だった。



記憶は曖昧なものである。

平凡な人生なんてひとつもない。

ということはわかる。



夫婦の間で、

一番大事なのは、小さくて平凡な話をすること。何年も何十年も、倦まずに小さな話を続けること。

この言葉は心にしみる。



深い意味のある小説のような気がするが、よく理解できなかった。


お気に入り度⭐⭐⭐