イン-ザ-メガチャーチ
朝井リョウ 日本経済新聞社 2025年9月
沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。
あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。
「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」
留学をめざす大学生の澄香は、物事の捉え方が重いとゼミ仲間から思われていて、仲間とうまくいってない。
音楽に関わる仕事をしている久保田は、ひとり暮らしだが、別れた妻との娘-澄香とは、定期的に電話している。しかし、話が盛り上がらない。
倫太郎を推していた絢子だが、彼が
亡くなり、生きる意味を失う。
この3人が視野を狭めていく様子が描かれている。
押しにのめり込む様子は、宗教のようで、おそろしい。
押しのためと、どれだけのCDを買ったのだろう?
そのように仕向けているのは、音楽業界の人たち。
全部仕組まれているというのが、もっとおそろしい。
押しの話から、警察やメディアを始めとする黒幕は、巧みに真実を覆い隠し、日本人を洗脳しているという、飛躍的な考え方、政治、国力という大きな問題にまで発展している。
そんなことはないだろうが、意図的に仕組まれた情報もあるのかも。今あふれている情報の中で何が真実なのか、見極めることは重要なことかも。
私は、久保田が若い出演者と友だちに なり、変わろうとしているところに共感できた。
結果はうまくいかなかったようだが。
それでも、行動に出たからこそ、わかったことがある から、意味があると思う。
最初の方で、〈今後還ってくるのは、やってきたことよりも、やってこなかったことのほうかもしれない〉というのが意味深。
ラストは、この3人が、仲間たちと共に集結。その時の様子が目に浮かぶ。
うまい構成だ。
お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐
