あなたには、殺せません
石持浅海 東京創元社2023年7月
犯人だって、好きで犯罪に走ろうとしているわけではありません。必ず迷いがあります。その段階でうちに来てもらえれば、犯罪の発生を未然に防ぐことができます」――そのNPO法人には、罪を犯すか悩む人が相談にやってくる。相談員はそんな犯罪者予備軍たる人々から聞き出した犯行計画の穴を次々と指摘していく。不備を突かれた者たちの殺意は、果たして本懐を遂げるのか。犯罪発生を未然に防ぐ!? 新しい形の倒叙ミステリ短編集!
【目次】
「五線紙上の殺意」
高校時代の同級生とコンビで音楽活動をする有馬駿。その相方に裏切られた恨みを晴らすために相手を殺すと心に決めている。
「夫の罪と妻の罪」
夫が人を殺す瞬間を目撃した妻は、事件が発覚する前に夫を殺し「殺人犯の妻」となるのを避けようとする。
「ねじれの位置の殺人」
服部建斗は思いを寄せていた女性を水難事故で失った。彼女が増水した河川敷から逃げ遅れた原因が双子の姉にあると考えた彼は、復讐を誓う。
「かなり具体的な提案」
パートナーに暴力を振るわれていた英会話教室の講師を見捨てて死なせただけでなく、その責任を擦り付けてきた知人に、日下部渉は殺意を募らせる。
「完璧な計画」
同性の恋人が世間の目を気にしてお見合い結婚をすることになった目黒恵利。見ず知らずの男性に恋人を奪われる現実に耐えられず彼女の殺害を目論む。
犯罪の発生を未然に防ぐためのNPO法人。
こんな、犯罪を起こす前の駆け込み寺、ありそうで、今まで、なかったんじゃないかな?
誰を殺したいか?
なぜ殺したいか?
どんな方法を考えているのか?
ていねいに聞いていき、その可能性を検証していき、決行するのが困難なことをひとつづつ説いていく。
「あなたには、殺せません。』という結果になる。
相談者は、相談員の話に納得して帰っていく。
相談員の説得に従い、 殺しをやめるのか?
相談員の裏をかいて、殺しを実行するのか?
短編、それぞれ、違う結果で、とてもおもしろかった。
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