夜空に浮かぶ欠けた月たち
窪美澄 KADOKAWA 2023年4月
東京の片隅、小さな二階建ての一軒家。庭に季節のハーブが植えられているここは、精神科医の夫・旬とカウンセラーの妻・さおりが営む「椎木(しいのき)メンタルクリニック」。キラキラした同級生に馴染めず学校に行けなくなってしまった女子大生、忘れっぽくて約束や締め切りを守れず苦しむサラリーマン、いつも重たい恋愛しかできない女性会社員、不妊治療を経て授かった娘をかわいいと思えない母親……。夫妻はさまざまな悩みを持つ患者にそっと寄り添い、支えていく。だが、夫妻にもある悲しい過去があって……。
篠原澪は、故郷から上京し、同級生ともなじめず、大学に行けなくなってしまう。
真面目な澪だからこそ、その気持ちに苦しくなる。
ほかにも、
時間が守れないなど、だらしないイラストレーター。
恋人から、いつも重いと言われる女性。
誰の助けもない育児にいっぱいになってしまった母親。
そんな悩む人たちがいた。
その人たちに親身になってくれたのが、喫茶店の純さんや椎ノ木クリニックの旬とさおりさん。
〈人間は完全な丸じゃないのよ〉
〈生きているだけで、愛されるに値する人間なんたよ}
この言葉に救われる。
純さんやさおりさんたちにも、つらい過去があったのだな。
心の痛みがわかっているからこそ、寄り添えるのかも。
どんな人でも、
人生の中でいつ不安になるかもしれない。
いつ、うつになるかもしれない。
そんなとき、そっと手を差し伸べてくれる存在がいる。
弱っているときに助けてくれる人がいる。
それが大切なこと。
人生、いつからでもやりなおせる。
心にやすらぎを与えてくれる物語だった。
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