7.5グラムの奇跡
砥上裕將 講談社 2021年10月




国家試験に合格し、視能訓練士の資格を手にしたにもかかわらず、野宮恭一の就職先は決まらなかった。 後がない状態で面接を受けたのは、北見眼科医院という街の小さな眼科医院。 人の良い院長に拾われた恭一は、凄腕の視能訓練士・広瀬真織、マッチョな男性看護師・剛田剣、カメラが趣味の女性看護師・丘本真衣らと、視機能を守るために働きはじめる。 精緻な機能を持つ「目」を巡る、心温まる連作短編集。

眼科に行くと、眼科医に診察してもらう前に、目の検査をしてくれる人がいるが、視能訓練士という資格を持った人だったんだと知った。


 見えにくいという小学生の女の子
カラーコンタクトを入れないと外に出られない女性
目薬差すのを時々忘れる緑内障の若い会社員
音楽をあきらめ喫茶店を開いた緑内障の男性
認知症の夫を連れて来る仲の良い老夫婦
青い鳥を探す少年・・・・
眼科医院に来るこのような人達に視能訓練士の野宮はどのように接したのか。


野宮は新人の視能訓練士で失敗も多いけど、まじめに仕事に取り組み、患者の気持ちに寄り添っているところがいい。
<僕は楽しさで仕事をしていません。でも、自分にとって一番価値があると思えることをやっています。それが僕自身を生かす一番の方法だと信じています。>

また、同じ病院に勤める医師や医療従事者たち も、暖かい気持ちを持った人達で、野宮は、彼らともいい関係を築いているところもよかった。

 目が見えるということを当たり前のように感じているけど、緑内障などの眼の病気のことを思うと、見えることに感謝したい気持ちになった。

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