春いちばん 賀川豊彦の妻ハルのはるかな旅路
玉岡かおる 家の光協会 2022年10月




 

 大正から昭和にかけて、貧困・男女格差・労働者搾取など数々の社会問題に夫とともに立ち向かった女性、ハル。 夫はノーベル平和賞の最終候補にもなった社会活動家、賀川豊彦です。 第一次世界大戦、関東大震災など、激動の時代を社会の底辺にいる人々のために闘ったハルの波乱万丈の生涯を、玉岡かおる氏が詩情豊かに描きます。 川崎造船所社長など神戸の名士たちや与謝野晶子、平塚らいてうといった実在の人物も多数登場。 夫婦の社会運動のよってスラム街が一掃され、神戸の美しい街なみができるに至った近代史が、ハルの人生を通して鮮やかに蘇ります。


貧しさゆえ女中として働き、おじの好意により、女学校に行かせてもらうが続かず、女工として働く。
賀川豊彦と出会い、結婚。夫と活動を共にしたハルの人生。そこには、さまざまなドラマがある。


ハルがプレゼントしたセーターを老人にあげてしまった場面があったが、女心がわかってないなあと思う。
ハルは、ショックを受け、悩む。

また、夫の書いたの書物に「妻は自分の活動を手伝う限りは地味な女工の方がよかろう」
こんなこと書かれたら、世間の目は、自分のことを女工しかみない。

このこともハルは悩む。

しかし、
夫賀川豊彦は、貧しい者、弱き者を第一に考える人だった。
そんな夫を尊敬し、彼の信念を信じて一緒に歩んで行くことに価値を見いだす。
夫についていく決心を固める。

 そして、自らも女性活動家として活躍する。

ハルには友ができた。
しかし、経営者の妻と労働者の味方であるハルという立場で悩む場面もあった。

ハルは、強く女性だ
賀川豊彦は、偉大な人であったことは間違いないが、妻ハルの支えがあったからこそである。
普通の夫婦のような生活はなかったとしても、ハルは幸せだったのだろう。

賀川豊彦をハルの視線で見ることができたことも良かった。

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