西加奈子 新潮社 2021年10月





 

 



15歳の時、 高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。 普通の家 庭で育った「俺」と、 母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 共有できる ことなんて何一つないのに、 互いにかけがえのない存在になっていった。 大学卒業後、 「俺」はテレビ制作会社に就職し、 アキは劇団に所属する。 しかし、 焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、 俺たちは少しずつ、 心も身体 も、 壊していった......。 思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描 きながら、 人間の哀しさや弱さ、 そして生きていくことの奇跡を描く。 本書は著者が初めて、 日本の若者の生きていく上でのしんどさに真正面から取り組んだ作品。



装丁から、苦しそうだった。

貧困による生活苦から、子どもを虐待してしまう。あってはならないことだ。


深澤暁(アキ)は吃音に悩まされ孤独だった。

高校生の俺が、アキ・マケライネンのことを教えたことでアキの人生は変わる。

この出会いが、アキを明るい方へ、導いたのではないか。


一方俺は、両親がいて、学校に行くのにも、お金の心配はいらなかった。

それが、父親の死によって一変する。

大学へは、奨学金をもらって、アルバイトをしながら学生生活を送る。

そして、テレビ制作会社へ就職。

この会社での働き方が、半端なくハードだ。

俺は、根性があり真面目なのはわかるが、

ここまで頑張る必要はないと声をかけたかった。


高校の時からアルバイトしていた遠峰の言葉が心に染みた。

<不公平だよ。私は自分が望んでこの環境にいるわけじゃない。>

<憎むことが負けと思うようになった。・・・・略・・・・

私は優しいんじゃない。私は誰も憎まない。ずっと笑ってる。負けたくないから。>p219



貧困がもたらす影響の大きさ、過重労働がもたらす心身への影響・・・・


中島さんのような頼れる大人の存在は大きいと思う。


助けを求めることは、恥ずかしいことでも、負けを認めることでもない。


夜が明ける日が来ることを願う。


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